遊べない雪の校庭
関東地方が大雪に見舞われた。一度目の大雪の後、川崎市に住む私は、区役所に行く用事があった。途中、小学校前を通ったが、一面真っ白の校庭に人の足跡が全くない。授業中だったから、人影がないのは当然だが、あまりにきれいな銀世界に違和感を覚えた。
東北で生まれ育った私の小学生時代、20㌢くらいの降雪だったら、雪合戦や雪だるまつくりで、小学校の校庭はそれはそれは賑(にぎ)やかだった。
普段、校庭で遊ばない子供でも、雪の日ばかりは子犬のようにはしゃぎ回った。当然、校庭の銀世界の美しさはすぐに踏みつぶされ、遊びの痕跡だけが残る。
ところが、その小学校の校庭は、様相を異にしていた。子供が遊んだ形跡が全くなく、2日たっても校庭は銀世界の美しさをとどめていた。まるで新雪直後の東北の田んぼだった。
校庭の演台近くの掲揚塔を見たら、赤い旗が掲げてあった。合点がいった。校庭での遊び禁止を告げる印だったのだ。光化学スモッグが出る時に、赤い旗が揚がるのは理解できるが、雪が降っても遊び禁止になるというのには、ちょっと驚きだった。
私の子供の頃には、そもそも赤い旗のルールはなかったのだから、それだけでも時代と環境の違いを感じるが、それにしても体中雪まみれになって遊んだ小学生時代を思い出すと、いかに都会とはいえ、雪の日に遊び禁止になるとは過保護ではないか、と首をかしげてしまう。
だが、それも雪が当たり前だった地方で育ったからなのだろう。雪の上で児童を遊ばせれば、「服が濡れて風邪をひく」「ケガしたらどうする」と、保護者からの苦情が学校に殺到するのかもしれない。校庭の土も荒れるとの学校側の心配も考えられる。雪が降っても、学校で雪合戦できない都会の子供たち。うずうずする体をどこで発散させているのか。(森)