「多様な性」の実体 ゲイ相手「3桁」の無秩序
《 記 者 の 視 点 》
動物行動学研究家の竹内久美子氏が今年3月末、『フレディ・マーキュリーの恋』(文春新書)を上梓(じょうし)した。副題は「性と心のパラドックス」。
英国のロックバンド「クイーン」のボーカルで、男性同性愛者(ゲイ)であったフレディは日本にもファンが多いロックのスターだった。しかし、エイズウイルスに感染し、1991年に亡くなった。
この本はゲイ、女性同性愛者(レズビアン)などがなぜ存在し続けるのか、その謎について最新の科学研究で分かった事実を基に迫るというが、実際は7年前に出版され、筆者も読んだ「同性愛の謎――なぜクラスに一人いるのか」の増補改訂版だ。
映画ファンなら、もうお気付きだろう。映画「ボヘミアン・ラプソディ」が昨年末、日本で公開されて大ヒットしたことを捉え、彼の名前を冠して出版されたのだ。このため、「クイーン世代」の著者のフレディへの熱き思いを書き加えてはいるが、それ以外の内容は前書とほぼ同じ。
だが、私は増補版を手にし、そこにあった一つ研究結果に衝撃を受けた。ゲイとレズビアンを対象とした米国の調査だ。「これまで経験した相手の数」をゲイに聞いたところ、「100人以上が75%」も存在した。しかも、「1000人超えが27%」だという。
前書にも同じデータが掲載されていたのだから、すっかり失念していたことになる。それはたぶん、あまりの性行動の無軌道さが信じ難く、調査の信憑(しんぴょう)性に疑問を抱いたため読み飛ばしてしまったからだろう。では、なぜ今回、このデータに注目したのか。それは最近、ゲイの当事者による、ある発言が気になっていたからだ。
月刊「Hanada」2018年12月号で元参院議員、松浦大悟氏(ゲイであることを公表している)は、「ゲイのセックス経験人数は平均でだいたい三ケタだというのが私の実感」と語っていたのだ。
昨年、保守派の衆院議員、杉田水脈(みお)氏が「彼ら彼女らは子供をつくらない。つまり『生産性』がない」と書いたのがきっかけで、休刊に追い込まれた「新潮45」の10月号(最後の号)で、松浦氏は「私は生まれてから48年間、1度も人と付き合ったことがありません。将来、同性婚制度が施行されたとしても、それによって私に恋人が出来るわけではありません」と述べている。だから、ゲイのすべてが奔放な性行動に走るわけではないだろう。
それでも、竹内氏が示した研究結果は、松浦氏の「実感」が的外れでないことを示したものと言える。竹内氏は、性交渉の相手が多くなる理由について、女性と違って、ゲイは「相手を厳しく査定する性質を持っていないので、たやすくオーケーが出る」と解説している。
もしそうであるなら、「多様な性」への寛容を訴える一方で、同性愛と男女の愛は「同じ価値を持つ」というLGBT運動の主張はゲイの性行動の実体を無視したものということになる。そして、その行き着く先にあるのは無責任な性行動が横行する無秩序社会であろう。
社会部長 森田 清策