米航空宇宙局(NASA)は、早ければ2020年…


 米航空宇宙局(NASA)は、早ければ2020年から国際宇宙ステーション(ISS)への「商業宇宙旅行」を認める方針だ。ISS往復にかかる費用は約5800万㌦(約62億円)という。

 桁外れの費用に“金満ジャーニー!”と嫌みの一つも投げ掛けたいところ。その一方で、米国のたゆみない伝統的なフロンティア精神の力強さを思う。宇宙空間のマネジメントを世界に先駆けようと、いよいよ一般国民の宇宙旅行実現に向かう。

 ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功したのは1903年。初期の飛行は命を懸けた冒険に近く、一般の人の旅行に使われるレベルではなかった。航空機の信頼性がある程度確保され、旅客機となったのは第1次世界大戦後のこと。

 当時の乗客は命を賭した冒険に大金を払う金持ちや、迅速に懸案を処理すべくやむなく利用した外交官のような立場の人たちだったという。目指す宇宙旅行のそれを思わせる。

 NASAは今回、民間人受け入れによる宇宙旅行の収益などでISSの運用コスト削減を図り、24年を目標とする有人月面着陸にも注力したい考えだという。人々の月面旅行実現も目指す。

 開発の原動力、その背景には、宇宙を自国の庭にともくろむ中国の存在がある。宇宙をめぐる米中の覇権争いは熾烈(しれつ)だ。日本は軍事・民生双方に用いることのできる技術開発に消極的だが、ナイーブ過ぎる。宇宙工学の専門家をもっと育て、宇宙の可能性を追求すべきだ。