携帯電話「分離プラン」 5G普及をどう進めるのか
《 記 者 の 視 点 》
いわゆるガラケーをまだ使用している。用途がまだガラケーで何とか間に合っているからだ。世間はもちろん社内でもガラケーは少数派で、ガラケーだった同僚もいつの間にかスマホ派に転向し、家族内では息子が今年の初めスマホにとうとう切り替えた。
関心がないわけではなく、それとなく息子の切り替え手続きに同行した。店頭の担当者は慣れたもので、1時間近く時々息子に確認を求めながら滑らかに説明した。
契約を終えて渡された書類は20枚近く。契約申込書をはじめ個人情報に関する同意書、請求書兼領収証などだ。
ガラケー契約時もそうだったが、やはり、内容が分かりにくい。「〇〇割」の表示が多く、割引期間もそれぞれ違う。いろいろなサービスも付いて、とにかく複雑である。
そう感じる人が多かったということであろう。5月20日に、携帯の通信料と端末代の分離を義務付ける改正電気通信事業法が成立した。施行はこの秋だが、携帯大手は既にこれを先取りした分離プランを発表し、テレビCMなどで活発な競争を展開している。
分離プランの導入は、料金体系が分かりにくいことのほか、「端末代ゼロ円」などと謳(うた)った苛烈(かれつ)な販売競争や、通信料が高いという批判からきている。菅義偉官房長官が「4割は下げる余地がある」と発言したほどである。
通信料が割高なのは、携帯各社が新規契約を増やすために、先の謳い文句のような端末代の大幅な値引きを行い、その値引きの原資に通信料が使われてきたからだ。
こうした販売手法だと、例えば2年ごとに機種を買い替えるユーザーにとってはメリットが多いが、使用期間の長いユーザーには何の恩恵もなく不公平という批判も。
では、分離プランでこうした点は改善されるのか。料金体系の複雑さや長期・短期ユーザー間の不公平感は確かに改善が見込めそうである。通信料も安くはなるが、端末代を含めたトータルの料金では、端末代に以前ほどの割引がなくなるため、逆に高くなる場合もある。使用頻度や同じ機種をどのくらい使い続けるかでまちまちというわけである。
極論すれば、料金体系のスッキリ感だけがメリットのようなのだが、専門家によると大きな問題があるという。端末代の大幅値引きがないため、高額スマホが売れにくくなり、次世代通信規格5G普及の妨げになるというのだ。
MMD研究所が2月末に行った調査によると、携帯大手と契約しているユーザーが支払っているスマホの機種代は8万円以上9万円未満が最も多く、平均で約7万円だが、分離プランの導入で支払える機種代は、平均4万円弱と約3万円の減少になった。高額、高機能なものは避けざるを得ない結果となっている。
2020年春にドコモが5Gの商用サービスを開始する予定だが、メーカーとしても分離プランの下、売れにくいと見込まれる5G対応スマホの開発にどれだけ真剣に取り組むか懸念する声もある。総務省は5G普及をどう進めようとしているのだろうか。
経済部長 床井 明男