野党候補一本化 共産の力借りて政権取れるのか
《 記 者 の 視 点 》
共産党が今月、衆議院と参議院で議決した天皇陛下の御即位を祝う「賀詞」奉呈に賛成した。
3カ月ほど前に衆参両院で行われた、前天皇(現、上皇陛下)の在位30年に感謝と慶祝の意を表す「賀詞」の議決では、前例がないとして本会議を欠席していたので唐突感は否めないが、志位和夫委員長は「天皇の制度は憲法上の制度。この制度に基づいて新しい方が天皇に即位したのだから祝意を示すのは当然」と表明。平成の御代替わりの時に「賀詞」に反対したのは、「当時の綱領は『君主制の廃止』を掲げていた」ためで、その規定は2004年の綱領改定の際に削除し、「天皇条項も含めて現行憲法のすべての条項を順守する立場を綱領に明記」したと述べている。
戦前から叫んでいた天皇制打倒(天皇の政府の転覆および君主制の廃止)の大看板を既に下ろしたというのだが、廃棄したわけではない。不破哲三前議長は「民主主義の精神、人間の平等の精神にたって、天皇制をなくす立場」は変わっていないが、「主権者である国民の多数意見が、その方向で熟したときに、国民の総意で解決する」と語っている。時が来れば、憲法を改正するということだ。
つまり、「天皇制の廃止」が少数意見のうちは「天皇制と共存」しながら、天皇が「国政に関する機能を有しない」と定めた憲法4条などを盾に皇室の弱体化を推進するというのだ。
自衛隊についても同じような戦術を取っている。「自衛隊を違憲の存在だとする立場は少しも変わらない」が、当面は自衛隊と共存し、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置を取りながら、「国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」段階的解消論を主張している。つまり、憲法9条を盾に自衛隊の弱体化を推進するというわけだ。
共産党が当面、皇室や自衛隊と共存路線を採るのは、立憲民主党や国民民主党などとの選挙協力によって自公政権を倒し、連立政権入りを目指してのことだ。前回の参院選では、国民連合政府構想を打ち出し、積極的な1人区での野党候補一本化を進め、ある程度の実績を挙げた。今回も参院選に向け20選挙区の候補を取り下げて積極的に一本化を働き掛けている。
ただ、皇室や自衛隊とは違ってオブラートに包めない政策もある。日本社会が必要とする民主的改革の第一に掲げた「日米安保条約を廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる」だ。これは日本がアメリカの「事実上の従属国」であり、「アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威」との現状認識からくる必然的な結論だ。
参院選を控え、各選挙区に数万票と活発な運動員を持つ共産党は、野党各党にとって喉から手が出るような存在だろう。しかし、国家国民の平和と安全を根底から覆す政策を持つ政党と安易に手を結んでいいのか。「政権選択の選挙でないから」というのは言い訳でしかない。
政治部長 武田 滋樹





