<コーヒーにどうして砂糖を入れぬかとまた…


 <コーヒーにどうして砂糖を入れぬかとまた問う母にまた答えおり>。この歌の作者、俵万智さんと同じような経験を持つ人も結構いるのではないか。コーヒーの飲み方の個人的な好みの違い以上に、世代の差を感じさせる歌である。

 <コーヒーカップに角砂糖をひとつだったね>は、岡本おさみ作詞、吉田拓郎作曲「襟裳岬」の一節。角砂糖1個というのは、この歌が作られた1970年代の日本人がコーヒーに入れる量の平均に近いものだったかもしれない。今では角砂糖1個でも多いと思う人は少なくないだろう。角砂糖そのものも、めったに見なくなった。

 今年になって、気流子も時々入る大手コーヒー・チェーン店のスティックに入った砂糖の量が、3分の1ほど減った。

 今どき丸々1本分を使う人は少ないだろうに、もったいないことだと思っていた。店の側も半分近く、あるいはそれ以上使われずに残っているのを見て、頭を悩ませていたに違いない。

 コーヒーに入れる砂糖の量が減ったのは、当然ながら糖分の取り過ぎは健康に良くないと言われるようになったのと密接に関係している。その傾向は、生活習慣病への対策を叫ぶ声の高まりと見事に一致している。

 砂糖を少なくすることで、コーヒーの味への感覚も磨かれた。そういう点で、砂糖を控えたことで日本人が得たものは小さくないと言える。味覚の秋を迎え、味覚と健康は深く結び付いていることに改めて気付いた次第。