「暗号」は当事者間だけで了解した記号で、通信文の…
「暗号」は当事者間だけで了解した記号で、通信文のやりとりなどで重宝される。その起源は古く、数千年の歴史を持つと言われる。20世紀には電気機械式の暗号が発明され、以前にない桁違いに長い数列が使われるようになった。
しかし、しょせんは人工的な数列だ。最近ではコンピューターの演算処理能力の向上に伴って解読される危険性が増している。そこで盗聴やハッキングができない暗号として注目されるのが、光の最小単位の粒(光子=量子)に情報を搭載して送信するデータ通信技術。
既に欧米先進諸国では、国防のための必須技術としてつばぜり合いの開発競争が続いているが、政府はこの「量子暗号通信」の実用化に向けた研究に乗り出すことになった。来年度から5年間かけ実証実験を行う。
量子(光子)は目に見えないのに、その結果や作用は実体的で、観察しようとすればその量子状態が変化してしまう。その性質を利用して、当事者以外の接触による情報漏洩(ろうえい)を防ぐようにする。
100年ほど前に発見された光子などの基礎研究は「量子力学」として完成し、暗号の分野だけでなく、今や社会生活に欠かせないツールに。この間、日本人科学者がその発展に大いに寄与した。
来年度の予算案で、国立大の研究所の研究予算について今年度比約7%の削減が検討されている。研究費の削減が毎年のように続いているのは「技術立国」の実績を持つ国とは思えないふがいない措置だ。