前頭が横綱に勝つことは金星と言われる。金星…
前頭が横綱に勝つことは金星と言われる。金星は単なる白星を超えて「特別な勝利」とされる。前頭が大関を倒しても「銀星」になることはない。金星には「横綱は特別の存在」という前提がありそうだ。大関と横綱の間には、それほど大きな差がある。
横綱審議委員会(横審)という組織がある。横綱になるには、横審の審議を経なければならない。相撲という一競技の横綱という地位に関して、錚々(そうそう)たるメンバーが集まって議論する。横綱の重さを改めてわれわれ素人も知ることになる。
横審の規則では「品格、力量が抜群」であることが横綱の条件となっている。「品格」が先で「力量」が後なのは、横綱昇進に関して品格が重視されることを物語っている。
が、力量は分かりやすいが、品格の判断は難しい。「横綱にふさわしい」かどうかが品格の基準だが、「ふさわしい」は常に流動的だ。
相撲の勝負はルールで決まっているが、品格はマナーの一種だから、白黒をつけることは難しい。横綱昇進の重要な条件になっているのは厄介だ。
戦前、不倫は「姦通(かんつう)罪」という犯罪だった。詩人の北原白秋は2週間拘留されたことがある(その後無罪)。戦後は姦通罪が廃止され、不倫で刑罰を受けることはなくなったが、社会的制裁の対象となることも多い。横綱も品格がないと見なされれば、ルール違反でなくても多くの批判を浴びる。品格は今後とも難しい課題であり続けるだろう。