前代未聞の無惨で卑劣な犯行…
関東地方も梅雨が明け、電車の窓から見える入道雲に夏の到来を実感する。しかし、からりと晴れた気分にはなれない。相模原市の障害者施設襲撃で殺害された19人、重軽傷を負った被害者やその家族のことが心に掛かる。
この前代未聞の無惨で卑劣な犯行には、これまでの常識では理解し難いことがあまりに多い。一言で言えば、正気の沙汰とは思えない犯行で、薬物の問題もありそうだ。2月には衆院議長宛てに犯行予告の手紙を送っている。
しかしその一方で、容疑者は、結束バンドを用意し職員5人を拘束するなど、犯行は実に計画的だった。衆院議長宛ての予告通りの犯行だった。
容疑者の人間像も、これまでの犯罪者の類型に簡単には当てはまらないように思われる。社会に対し強い不満や不平があるというわけではなさそうだ。
何より分からないのは、その動機だ。この施設で働いていた時に「障害者は死んだ方がいい」などとうそぶき、施設の園長が「ナチス・ドイツの考え方と同じだ」と言っても、自分が正しいと譲らなかったという。
命の尊さが言われる日本で、なぜ命の尊厳に真っ向から挑戦するような犯罪が起きるのか。ダーウィン的な優生思想、唯物論的な生命観に立つ限り、本当の意味で命の尊さを教えることはできないのではないか。そして警察車両の中で、容疑者が浮かべた不可解で不気味な笑みは何か。事件の背景にある闇はあまりに深い。