太平洋と大西洋を結ぶ海上交通の要衝、パナマ…
太平洋と大西洋を結ぶ海上交通の要衝、パナマ運河の拡張工事が完了し、盛大に開通式が行われた。運河を航行できる船舶の幅は32㍍から49㍍に拡大。より大型の船舶の航行が可能になった。
世界4位の利用国である日本にとっては、エネルギー輸送コストの削減が期待される。北米から同運河を経由しての液化天然ガス(LNG)の輸送期間は、喜望峰やスエズ運河を回るより約20日短縮される。
戦史に関心のある人ならば、戦艦大和のことを思い起こすかもしれない。日本海軍が誇った大和の大きさ、とりわけ世界最大の主砲、46㌢砲はパナマ運河の幅と深く関わっていた。
当時、米国の軍艦の造船所は大西洋側に集中しており、新造された軍艦はパナマ運河を通って太平洋側に出ていた。そのため艦幅を制限せざるを得ず、艦載砲の口径も制限され、大和と同世代の戦艦が搭載する主砲は40・6㌢、最大射程は38㌔㍍だった。日本の海軍首脳部は、それらを上回る最大射程42㌔㍍の46㌢砲を造ったのである。
しかし大和・武藏が完成した頃、皮肉にも大艦巨砲による艦隊決戦の時代は過ぎ、航空機の時代を迎えていたのはよく知られている通り。
米英との戦いは石油をめぐる戦いでもあった。中東情勢の不安定化と中国の海洋進出がシーレーンの将来に暗い影を投げ掛けている。パナマ運河経由のエネルギー輸送ルートは重要性を増しそうだ。