「高級ワインもあります」


チリのワイン業界、価格競争の脱却を目指す

「高級ワインもあります」

フランス・ボルドーで開かれた国際ワイン・フェアに出品されたチリ産ワイン=2009年(AFP=時事)

 「高級ワインもあります」。低価格で知られ、日本でも人気の高いチリのワイン業界が生き残りを懸け、ブランドの確立に力を入れている。欧州の経済危機などをきっかけに主要輸出先からの値下げ圧力が激化。薄利多売の商法では「先細りするだけ」と危機感を抱く。

 アンデス山脈と太平洋に挟まれたチリは、昼夜の寒暖の差が激しく、ブドウ栽培に適したやせた土地に恵まれる。16世紀、スペインからの征服者がブドウの苗木を持ち込んだのがチリワインの始まりとされ、今や世界第5位の輸出国だ。国際コンクールでの受賞も多く、安定した品質には定評がある。

 ただ、瓶詰めされていないブレンド用や、1本数百円の低価格帯ワインは、国際的な価格競争が激化している。生産技術の進歩で、南アフリカや米カリフォルニア、中国産の質が向上してきたためだ。チリワインの輸出先第4位の日本は「特に低価格へのこだわりが強い国の一つ」(地元輸出業者)。

 チリワイン協会は2011年、14億2000万ドル(約1450億円)に上るワイン輸出額を10年間で倍増させる野心的な計画を打ち出した。短期間で大量生産が可能なステンレスタンクではなく、時間と手間を惜しまないたる熟成の高品質ワインの出荷を加速。市場拡大が進むアジアで宣伝活動を強化し、ブランド確立に力を入れる戦略だ。(サンティアゴ時事)