福島の小中学生、離れたふるさとの伝統を学ぶ
原発避難の学校で授業、「田植え踊り」を披露
東京電力福島第1原発事故により避難生活を強いられている周辺町村の学校で、地元に根付いていた文化を学ぶ授業が広がっている。触れにくくなったふるさとの伝統を、子供たちが体得する貴重な場になっている。
福島県飯舘村にあった飯舘中学校の生徒たちは2012年度から、仮設校舎のある福島市内で村の文化や歴史を学ぶ「ふるさと学習」を続けている。昨年12月には1年生が、米の豊作を祈る「田植え踊り」を披露。民家を回って行う本来の踊りに近づけるため、福島市内の古民家を使い公演した。
伝統の衣装を着た生徒らは、踊り場に入る「数え唄」、収穫祝いの「黒川」、仕事終わりを祝う「上(あんがり)はか」など四つの踊りを再現し、村民らによる太鼓と笛の演奏にも加わった。同校によると、参加した生徒からは「踊りを来年の1年生に教え、伝統を絶やさないようにしたい」などの感想が寄せられた。
2年生は村の「語り部」から聞いた民話を基に紙芝居を制作。3年生は、かつて村の家庭で食べられていたみそを作った。同校の和田節子校長は「村の中で脈々と受け継がれてきた文化や伝統を、生徒たちが受け止めて再現していた」と振り返った。
同県双葉郡の8町村の小中高校では14年度から、伝統文化や特産物などを調べる「ふるさと創造学」を開始。年に1度、各校の児童生徒が避難先から集まる「サミット」で成果を発表している。
昨年12月12日に郡山市内で開かれたサミットでは、葛尾村立葛尾小の児童が、村に伝わる「宝財踊り」を紹介。村民から話を聞き、実際に踊ってみて学んだ。浪江町立浪江中の生徒は、制作者から作り方を教わった、数百年の伝統がある町の工芸品「大堀相馬焼」を紹介した。主催する8町村の教育長らでつくる協議会によると、参加した生徒らからは「町のことをよく知ることができた」と好評という。