原子番号113番の新元素、日本に命名権を認める


国際学会が認定、理研などが人工合成・発見

原子番号113番の新元素、日本に命名権を認める

113番元素の合成に成功した加速器(奥)。中央は理化学研究所の森田浩介さん=2012年9月、埼玉県和光市の理化学研究所

 理化学研究所は31日、加速器で人工合成に成功した原子番号113番の新元素について、国際純正・応用化学連合(IUPAC)に発見者として命名権を認められたと発表した。元素の周期表に載ることになり、アジアで初めての快挙。

 実験を主導した理研の森田浩介グループディレクター(九州大教授兼任)は同日記者会見し、「これから科学を勉強しようという若い人が心の高まりを覚えるのではないか。理科嫌いが減れば、日本の国力にとっても意義は大きい」と述べた。

 113番元素は、周期表ではホウ素やアルミニウムなどと同じ13族。森田グループディレクターらは2003年から、亜鉛(原子番号陽子数30)の原子核を加速してビスマス(同83)の標的に衝突させ、完全融合させる実験を始めた。

 04年と05年、12年に1個ずつ、計3個の合成に成功。このうち3個目は、合成できた直後にヘリウム(同2)原子核を放出するアルファ崩壊を6回繰り返し、メンデレビウム(同101)まで6種類の元素に次々に変わる過程を観測できたため、成功が確実となっていた。

 ロシアのフレロフ核反応研究所と米ローレンス・リバモア研究所などの共同研究グループも別の方法で113番を含む四つの新元素を合成したと主張。このうち115、117、118番の三つの新元素は米露チームに命名権が認められたが、113番元素は連鎖的に既知の元素に至る過程を観測できず、理研に軍配が上がった。

 日本人による新元素発見の試みは、以前にもあった。東北帝国大(現東北大)学長を務めた小川正孝博士が1908年に鉱物から43番元素を発見したと発表。「ニッポニウム」と命名したが、別の元素と判明して幻に終わった。

 今回、理研関係者は113番元素を「日本にちなむ名前にしたい」と話している。IUPACと国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)への提案、審査を経て約1年後に決まる見込み。

 113番元素は合成後の寿命が1秒より大幅に短く、産業利用できるわけではないが、新元素の研究により化学の基礎的な仕組みの解明が進むと期待される。理研グループには東北大や山形大、筑波大、東京大、新潟大、日本原子力研究開発機構などの研究者も参加した。