チュニジアの4団体にノーベル平和賞を授与
「アラブの春」で民主化に貢献
ノルウェーのノーベル賞委員会は9日、2015年のノーベル平和賞をチュニジア労働総同盟(UGTT)など民主化のための「国民対話4団体に授与する」と発表した。チュニジアでは10年暮れから始まった「ジャスミン革命」で、ベンアリ独裁政権が倒された。13年に結集した4団体はその後の民主化への貢献が評価された。
チュニジアが発端となりアラブ諸国では民主化運動「アラブの春」が起きた。しかし、独裁政権の打倒後、シリアやリビアでは内戦が今も収まらない。エジプトでもクーデターが起きるなど混乱が続いている。これに対し、チュニジアでは唯一、民主化プロセスが平和的に進行し、希望の光となっている。
受賞が決まった4団体は、UGTTのほか、チュニジア工業商業手工業連盟(UTICA)、チュニジア人権連盟(LTDH)、チュニジア弁護士会。ノーベル賞委は、個々の団体に対してではなく、4団体の連合体(カルテット)に賞を授与すると強調している。
授賞理由では「革命後に社会不安が高まり民主化が危機に陥っていた時期に、4団体はチュニジア社会の各界各層を代表して調停役を務めた」と評価。その後の憲法制定や、基本的な権利を保障する政府の樹立など「ジャスミン革命後のチュニジアで多元的な民主化構築に決定的な役割を演じた」とたたえた。
チュニジアでは10年12月に青年の焼身自殺をきっかけとしたベンアリ独裁政権退陣要求デモが始まった。翌11年1月にベンアリ大統領はサウジアラビアに亡命、政権は崩壊した。その後、民主化プロセスが進められ、14年の大統領選で一応の完結をみている。
賞金は800万スウェーデン・クローナ(約1億1600万円)で、授賞式は12月10日にノルウェーの首都オスロで行われる。(ロンドン時事)