韓国の左派政治勢力が連帯模索
民主党が安哲秀氏に働き掛け
親北疑惑の統合進歩党は除外
韓国で左派系政治勢力が新たに連帯する動きを見せている。最大野党の民主党と昨年の大統領選で野党系有力候補だった無所属の安哲秀議員を支持するグループがその中心で、今後、朴槿恵政権・与党セヌリ党の対抗勢力として選挙協力に発展する可能性も秘めている。
(ソウル・上田勇実)
民主党議員と安議員、旧民主労働党穏健派らから成る正義党議員などの左派系政治家に在野の市民団体や宗教団体のメンバーらが加わった連席会議が12日、ソウル市内で行われた。会議の表向きの目的は情報機関・国家情報院(国情院)による昨年大統領選への不正介入疑惑の糾弾だが、これを契機に左派政治勢力による新しい連帯が始まるとの見方が広がっている。
民主党はこれといった政府・野党攻撃のネタを探しきれないまま大統領選敗北から1年が経過しようとしており、キャンドル集会などで政権批判運動を展開するものの世論の反応はいまひとつ。先月の再補欠選では予想通りの結果だったとはいえ、2選挙区とも与党に敗北し、執行部としては立ち直りのきっかけが必要だった。
一方の安議員は、4月の補選で初当選後、目立った議会活動もなく、存在感を示しきれずにいたが、シンクタンク「明日」を立ち上げ、新党立ち上げを視野に入れて全国組織の基盤を築いてきた。先日、国情院の不正介入疑惑をめぐり、政治的影響を受けない特別検事制の導入を主張して注目を集め、これを支持した民主党との連帯話が一挙に加速した。
連帯は政府・与党を攻めあぐんでいた民主党が、新党立ち上げの場合、民主党を上回る支持率が予想される安議員に働き掛けて実現したものだが、国民は昨年の大統領選でも似たような“光景”を見せられた。単独ではセヌリ党朴槿恵候補に勝てないと判断した民主党文在寅候補が既存政治脱却を唱える安氏の人気にあやかろうと候補一本化を持ち掛けた「文・安連帯」である。
当時は純粋に国民のための政治を訴えた安氏が、政治工作に長(た)けた民主党の厚い壁に阻まれる格好で候補をリタイヤしたが、さて今回はどうなるか。前回の苦い経験があってか、安議員は民主党との連帯を「懸案ごとに限る」と釘(くぎ)を刺しており、民主党の思惑通り全面的な連帯に発展するかは不透明だ。
今回民主党は、昨年4月の総選挙を前に選挙協力した親北政党・統合進歩党との連帯を見送った。内乱陰謀疑惑で大騒ぎとなった李石基議員の事件や政府による政党解散審査請求などで“空中分解”の危機に直面する同党を抱きかかえることは、さすがにリスクが大きいと判断したようだ。
この日の連席会議は、左派陣営が昨年の大統領選で敗北した後、初めて本格的な連帯に踏み出したものとして注目を集めている。欧州歴訪などで一部世論調査では再び60%近い高い支持率を示す朴政権を「切り崩す」には、民主党単独では限界がある。当面は来年6月の統一地方選を前に民主党と安議員グループがどこまで“接近”するかが見どころだ。