王者ボルトは大一番で底力、「最速」を死守


世界陸上男子100でガトリン下し、9秒79で連覇

王者ボルトは大一番で底力、「最速」を死守

男子100メートルで優勝し、ポーズを決めるウサイン・ボルト=23日、北京(時事)

 今大会、最も注目を集めた両雄の対決。不利が伝えられていたボルトが、大一番で復権を狙った今季好調のガトリンを0秒01差で抑え「人類最速」の称号を守った。男子100メートル決勝。集中力と勝負強さが際立った王者は「僕の狙いは引退するまでナンバーワンでいること。これがベストではないよ」とプライドをのぞかせた。

 本来は前半から飛ばすガトリンに、長いストライドで追い上げる後半勝負型のボルトとタイプが違う2人。だが、レース前に想定された展開とは少し違った。

 号砲が鳴り、ボルトはこれまで見せたことがないような好スタート。そのまま加速してトップスピードに乗り、ガトリンに重圧をかけた。わずかの差で先にゴールすると、おなじみの弓を引くポーズ。大歓声の中、勝利の余韻に浸った。

 今季は腰の故障が影響し、大会前の自己ベストは9秒87にとどまり本調子でなかった。この日の準決勝を含め9秒7台を連発していたガトリンが有利との見方が多かったが、「心配はしていない。自分に必要なのは、本来の力を出すこと」と自信は揺るがなかった。「自分のレースは最初の40メートルが肝心。そこがうまくいけば、いいレースになる」。その言葉通りに実践し、過去ドーピングで資格停止処分を受けたガトリンを下した。

 2008年北京五輪以降、フライングによる失格を除き、全ての五輪と世界選手権で王座を譲っていない。7年前の北京では二つの世界記録(当時)とリレーを含め三つの金メダルを手にし、伝説の幕が開いた。同じ地で、正真正銘のスターの証しである大舞台での絶対的な強さを改めて示した夜だった。(北京時事)