安価で安定、LNG輸入航路に高まる期待
パナマ運河の拡張工事が大詰め、操業まで1年
輸送能力の高い大型船の航行を可能にする中米パナマ運河の拡張工事が大詰めを迎えている。来年4月の操業開始に向け、工事は87・5%が終了。完成後はこれまで船幅が超過し航行できなかった液化天然ガス(LNG)運搬船も通れるようになる。東日本大震災以降、原発再稼働の是非に揺れる日本のエネルギー政策にも、影響を及ぼしそうだ。
パナマ運河は、日本人の生活と密接に関係している。国内で流通する鶏肉の3割は運河を経由。自動車鋼板や建築資材の原料となるブラジル産鉄鉱石、若者に人気の高い米東海岸の洋服や雑貨の多くも運河を通って日本に届く。運河完成後はコンテナ船の輸送能力が2・6倍に高まる。輸送コストの低下により「輸入品の値下げも期待できる」(外交筋)とされる。
中でも脚光を浴びるのは、2017年に米東海岸から日本への輸入が本格化するLNGだ。北米発の大型船は南アフリカ・喜望峰を経由するルートが一般的だが、運河完成後は太平洋を横断し輸送日数を25日間短縮することができる。安価で安定的なエネルギー調達への期待は高く、海運業界は「LNG船の発注を急いでいる」(商船三井)という。
ただ、パナマ運河庁は、拡張工事に合わせて新たな料金体系を導入する方針だ。コンテナ船の運河通行料は1回約43万ドル(約5100万円)で、この10年間で3倍に跳ね上がった。日本船主協会は「さらなる大幅な値上げは、輸送コストの削減分を相殺しかねない」と警戒を強めている。(パナマ市時事)