映画「百日紅~Miss HOKUSAI~」
葛飾北斎の娘、お栄の物語
原作は、2005年に亡くなった作家で漫画家の杉浦日向子(ひなこ)の短編漫画作品「百日紅(さるすべり)」で、1983年から87年まで「漫画サンデー」で連載された。北斎を中心とした人物たちを軸に、江戸の風俗、庶民の生活を描いて、時代考証はもとより、完成度の高さが人気を呼んだ。
この原作をもとに杉浦作品のファンという原恵一監督が北斎の娘お栄こと葛飾応為(おうい)に焦点をあてて描いた作品である。ちなみに応為とは、北斎がお栄を呼ぶ時に「おーい」と言ったところから名付けたと言われている。
お栄も浮世絵師で、父で師匠の葛飾北斎とともに暮らしている。家に集う善次郎や国直と騒いだり、犬と寝転んだり、時には妹と出かけたりしながら人生を謳歌(おうか)している。街では火事があったり、妖怪騒ぎが合ったりしてにぎやかだ。
お栄は恋に不器用で絵にも色気がない、と父に指摘され落ち込むが、それでも絵を描くことをやめない。
素朴な感じの絵柄は古き良き日本のアニメ作品を思い起こさせ、艶っぽく情緒豊かに描かれている。現在、英仏での配給が決定している。
お栄に杏、北斎こと鉄蔵に松重豊、その他、高良健吾、筒井道隆らが声優として出演している。
近年、お栄の新作品が発見されるなど注目を集めている。これから研究が進むであろう浮世絵師のひとりである。(佐野富成)