敦賀気比が選抜高校野球で初優勝、東海大四破る
松本が決勝2ラン、またも値千金の一発
準決勝で史上初の2打席連続満塁本塁打を放った松本は、決勝でも神懸かっていた。またも値千金の一発。6番打者のバットが、敦賀気比を初の全国制覇へと導いた。
両チームとも再三好機をつくりながら、勝ち越し点を奪えない。1-1の八回1死二塁。こう着状態をまさに、一振りで打開した。1ボールからの2球目。浮いた変化球をたたくと、打球は切れずに左翼ポール際へ飛び込んだ。
打球の行方を確認すると戸惑ったような表情を浮かべながら、人さし指を立てた右手を控えめに挙げた。自分のしたことが信じられない。「自分がホームランを打っているのかな、と思った」。夢見心地だった。
背番号は17。新チームになってすぐに故障し、「高校野球は終わった」と思ったこともある。逆境をはねのけた大舞台で、大きなインパクトと記録を残した。松本は「甲子園は、これまでの野球人生の中で、一番楽しい場所だった」と喜びをかみしめた。
報われた粘り、平沼は一人で投げ抜いたエース
39人目の打者、山本の打球をがっちりとつかみ、一塁に転送してゲームセット。敦賀気比の平沼は、駆け寄ってきたナインと歓喜のときを共有した。「夢がかなった」。最後まで一人で投げ抜いたエースが、北陸に初の優勝旗をもたらした。
毎回走者を背負い、死球も四つ。連投の苦しい投球が続く中で、ヤマ場は1-1の八回だった。無死二塁から投前の送りバントを処理して三塁でアウトを狙ったが、激しい走塁で三塁手が落球して二、三塁に。しかし、次の大沢が試みたスクイズを外して三塁走者を挟殺。「サインではなかったが、(捕手の)嘉門が外したところに投げた」。追い込まれて、なお冷静さを保った。続く2死二塁では、立花の痛烈なゴロを一塁の上田が好捕してくれた。
流れが変わる。その裏、先頭で四球を選び、松本の決勝本塁打を呼び込んだ。粘りの投球は報われた。
準決勝で大阪桐蔭に打ちのめされた昨夏の甲子園を教訓に、状況を見ながらギアチェンジすることを覚えた。この日も「後半勝負だと思い、序盤は抑えていた」という。野手陣も平沼を攻守に支え、サヨナラ勝ちあり、序盤の猛攻ありと多彩な展開で決勝まで勝ち上がった。東監督が「一戦一戦、成長する生徒が本当に頼もしかった」と目を細めた。