個展「フィオナ・タン まなざしの詩学」
東京都写真美術館で、ミッドキャリアを概観
東京都写真美術館で「フィオナ・タン まなざしの詩学」が開催されている(9月23日まで)。日本で初めて彼女の作品が展示されたのは1998年だったが、その後、2009年、ヴェネチア・ビエンナーレ・オランダ館に出品した「ディスオリエント」で大きな注目を浴び、新たな展開を見せている。そのミッドキャリアを概観する大規模な個展。
フィオナ・タンさんは1966年インドネシア・スマトラ島のプカンバル生まれ。中国系インドネシア人の父とオーストラリア人の母を持ち、オーストラリアで育った。
88年にオランダのアムステルダムに移住。横浜トリエンナーレ(2001年)はじめ多くの国際展に参加してきた。
静止写真、フィルム、ヴィデオ、デジタルヴィデオなど異なるメディアを用い、ドキュメンタリーとフィクションの間を行き来しながら、人や集団の文化的差異がどのように記録されてきたかを問いかける作品を作ってきた。
この個展では「デスオリエント」はじめ、アジア初公開を含む新旧の代表作全10点を紹介。
「インヴェントリー」(2012年)で映し出されていくのはイギリスの建築家ジョン・ソーン卿(1753~1837年)の邸宅。今は博物館となっており、彼が収集した考古学資料が至る所に陳列されている。その空間には彼の美学や人生が詰まっていて、作者の映像はものを収集し展示すること、そして時代を超えて人がそれを見つめる営みを捉え、その意味を考えさせる、詩的な作品だ。(岳)