南北統一へ準備委発足
「吸収」警戒し北反発も
韓国の青瓦台(大統領府)は15日、韓半島の平和統一に向けた汎国家的準備を進める「統一準備委員会」を正式に発足させた。南北統一の基盤作りは朴槿恵大統領の公約の一つだが、大統領直属の機構がスタートしたことで、「吸収」を警戒する北朝鮮の反発も予想される。(ソウル・上田勇実)
保守主導、革新系も参加
統一準備委は朴大統領を委員長に50人の委員で構成される。内訳は民間人委員30人、与野党国会議員2人、政府高官11人、政府系シンクタンクのトップ6人だ。外交安保、経済、社会文化、政治法制度の四つの分科会から成り、それぞれに計31人の専門委員を抱え、これとは別途に市民・統一教育・マスコミの3分野における諮問メンバーも加わる。その規模は総勢270人余りに達するとみられている。
「韓半島統一の青写真を作るために各界から識者が結集している」(青瓦台)が、保守政権下であるため保守主導で進む可能性が高い。ただ「国民の同意を得るため多様な背景と哲学を持った人たちが参加している」(同)のも事実で、例えば民間委員の外交安保分科会に所属する8人の中には南北首脳会談に随行した文正仁・延世大学教授や金大中政権時に駐日大使を務めた羅鍾一・漢陽大学碩座(せきざ)教授などの革新系学者も含まれている。
朴大統領は今年初めに「統一は大当たりする」と述べ、韓国大統領が韓半島統一への意欲を表したものとして日本でも話題になったが、今回の準備委発足は朴大統領の構想を実現させる具体的一歩だ。
これまで朴大統領は、対北朝鮮政策「韓半島信頼プロセス」の中に「小さい統一(経済共同体)から始めて大きな統一(政治統合)を目指す」ことなどを盛り込んでいるほか、今年3月には訪問先のドイツで、①離散家族再会の定例化など人道問題の解決②農林業や交通・通信、地下資源開発などに向けたインフラ構築③住民間の同質性回復――の三つを平和統一に向けた準備として北朝鮮に提案した。
統一準備委は来月初めに1回目の会合を行う予定で、今後さまざまな意見を収斂(しゅうれん)しつつ朴大統領の韓半島統一構想に沿って青写真がかたどられていくものとみられる。
問題は北朝鮮の出方だ。今回、統一準備委マスコミ諮問団メンバーになった韓国紙セゲイルボの趙敏皓・人権審議委員は、こう指摘する。
「統一というのは相手(北朝鮮)次第。北が本当に対話を通じた統一を望んでいるのか、あるいは偽装平和を見せているだけなのか、はたまた韓国赤化(共産化)統一を狙っているのか。一般的な評価はあっても完全に検証がなされたわけではない。今後、対話を通じて見極め、解決していかなければならない」
昨年末、叔父でナンバー2だった張成沢・朝鮮労働党行政部長を処刑した後、政権運営の行方が不安視されていた金正恩第1書記だが、それなりに権力を掌握している印象を国際社会に与えている。祖父や父同様、韓半島赤化統一路線を踏襲したと見る向きは強い。
北朝鮮が今回の統一準備委発足を韓国主導による「吸収統一」への布石と見なし、態度を硬化させることも予想される。