苦戦続くソフトバンク
スプリント買収、米携帯市場参入1年
ソフトバンクが米携帯電話3位スプリント・ネクステル(現スプリント)を買収し、米市場に参入してから1年が過ぎた。日本で成功したソフトバンクへの注目度は高かったが、首位ベライゾン・コミュニケーションズと2位AT&Tの2強を切り崩せず、スプリントは苦戦が続く。劣勢を挽回しようと、4位TモバイルUSの買収を計画。一段の再編劇に発展する様相を呈している。
スプリントは大手4社で唯一、顧客が流出。さらに、業績も赤字が続いている。今年1~3月期は、主力の月払い型の契約件数が実質で約33万件減少し、2強に追い付くどころか離されるばかり。下位からは、斬新なサービスで2強をしのぐ勢いで顧客を増やしたTモバイルUSが接近している。
スプリントにとって大きなネックとなったのが、高速通信「LTE」の整備の出遅れだった。ただ、LTEを含む通信設備の改良工事も今年半ばにおおむね完了する見込み。米アナリストは「今年後半には解約率が減り、契約件数は増加に向かう」(ウェルズ・ファーゴのジェニファー・フリッチェ氏)とみられている。
「スピード経営」をモットーとするソフトバンクの孫正義社長だが、営業攻勢だけで契約件数が約2倍も開きがある2強に短期間で追い付くのは至難の業。そこで目を付けたのが、Tモバイルの買収だ。欧州市場に経営資源を集中させたい親会社ドイツテレコム側の事情もある。水面下で交渉が進行しており、米メディアによると、今夏にも合意する見通し。
ただ、買収を審査する米政府当局は、大手が3社に集約される買収には懐疑的な見方とされる。「最も満足度が低いといわれる米国の通信産業を変えたい」とする孫社長が、当局をいかに説得するか。高いハードルとなりそうだ。(ニューヨーク時事)