韓国教育監選挙、公教育8割が“親北派”の手中に

理念すり込みの全教組系当選

左傾化教科書など混乱長期化も

 韓国で先週実施された統一地方選では、主要自治体の教育行政トップである教育監も同時に選出されたが、親北反米の偏向的な理念教育を現場にすり込んできた全国教職員労働組合(全教組)出身者が大挙当選し、波紋を広げている。保守派の間では、左傾化教科書などの問題で揺れてきた現場がさらに混乱するとの警戒感が強まっている。(ソウル・上田勇実、写真も)

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9日、ソウルの政府総合庁舎前で「法外労組」通告などに抗議するハンストに突入した全教組のメンバー

 ソウル市や京畿道など17の主要市・道ごとに選ばれる教育監のうち、今回の選挙では全教組出身者が8人、全教組に近い教授団体などの出身者が5人当選を果たした。その結果、小中高と幼稚園に通う児童・学生約700万人のうち80%ほどがこれらの全教組系教育監の“指導”の下に置かれることになった。

 13人の全教組系教育監のうち李在禎・京畿道教育監は、対北融和政策を進めた盧武鉉政権時代に統一相を務めた韓国を代表する“親北派”の一人。また、金錫俊・釜山市教育監は、北朝鮮の影響を受けて内乱陰謀を企てたとして大騒ぎとなったあの“従北”国会議員が所属する統合進歩党から2012年の総選挙への出馬を準備したことがある人物だ。

 今回、全教組系が大挙当選したのは、保守系候補が乱立して票が分散したためとみられている。また首長選との同時選挙だったため、旅客船沈没事故で反政府感情が広がった影響をもろに受け、政府に近いとみられた保守系候補への票が伸び悩んだという分析もある。

 保守派が全教組系教育監の大挙当選に警戒感を募らせる理由は、偏った理念を現場にすり込んだり、戦闘的な反保守政権運動の先頭に立ってきたためだ。こうした問題が繰り返されてきたため、朴槿恵政権は昨年10月、全教組に対し法的に認知した労働組合ではない、いわゆる「法外労組」であることを通告するなど、メスを入れようとしたほどだ。

 ところが、今回の選挙で風向きが変わる可能性が出てきた。全教組は選挙で「民心を得た」と受け止め、息を吹き返すとみられるからだ。李賢・全教組政策室長は「沈没事故は、韓国社会を支配してきた競争、差別、効率性、利益、金儲(もう)けといった一面的な価値観ゆえに起きたともいえる。全教組が主張する生命、人権、平和、労働などの価値教育で韓国が生まれ変わらなければならないという国民の熱望こそが今回の選挙結果につながった」と自信をのぞかせる。

 一部報道によれば、全教組系教育監は当選直後から連帯する動きも見せている。具体的には今後、給食無償化の拡大や平等意識に立脚した私立進学校の縮小、左傾化教科書の普及などの推進で団結し、場合によっては政府の方針にも反対することが予想されている。

 教科書問題では、これまで高等学校の歴史教科書の記述をめぐる左傾化批判に応えるため、昨年、新たに保守系執筆陣による教科書が出版された。全体的に北朝鮮を擁護するかのごとき誤解を与えていた左傾化教科書を是正しようという試みだが、全教組系教育監たちがこれに立ちはだかるのは間違いなさそうだ。

 韓国でも「教育は国家百年の計」と盛んに指摘されるが、左傾化の混乱からなかなか抜け出せず、青写真すら描けないのが現状だ。