竹本住大夫さん「たまには思い出してください」
文楽の人間国宝の引退公演が千秋楽、国立劇場で舞台に別れ
人形浄瑠璃文楽の太夫(浄瑠璃語り)の人間国宝、竹本住大夫さん(89)が26日、東京・国立劇場で引退公演の千秋楽を迎えた。68年間磨き続けた語り芸で「恋女房染分手綱 沓掛村の段」を情感豊かに聞かせ、満員の観客から温かい拍手が贈られた。
終演後、舞台上で引退セレモニーが行われ、「寂しいて、また次の公演に出るような気がしておりますけど、ここできっぱり浄瑠璃とは縁切って、弟子たちをできる限り指導していくつもりです。文楽を末永く、よろしくお願い申します」とあいさつ。若い頃から苦楽を共にした人形遣いの人間国宝、吉田簑助さん(80)から花束を贈られると手を取り合って涙ぐみ、別れを惜しんだ。
楽屋口ではファンや技芸員、劇場関係者ら約150人に出迎えられ、「たまには住大夫がいてたなあと思い出してください」と語り、万感を胸に劇場を後にした。
大阪生まれ。1946年初舞台、85年七代目竹本住大夫襲名。89年に人間国宝に認定され、現代の文楽をけん引してきた住大夫さんは、大阪市の文楽協会への補助金削減問題の渦中にあった2012年7月に脳梗塞で倒れたが、リハビリを重ね昨年1月に舞台復帰を果たした。しかし、「満足のいく語りができない」と今年2月に引退を表明した。