「雨に剪る薔薇の色のこぼれつゝ」(稲畑汀子)…
「雨に剪る薔薇の色のこぼれつゝ」(稲畑汀子)。花の王とも言われるバラは四季咲きで、いつでもその花を観賞できる。俳句の歳時記では「夏」の項目に入る。
バラは西洋から渡来したというイメージがあるが、日本にも自生した品種がある。万葉集にも詠まれているほどで「ウバラ」「ウマラ」などと呼ばれていた。
西洋種のバラは、江戸時代に遣欧使節の支倉常長(はせくらつねなが)が持ち帰ったと言われている。江戸時代は園芸が盛んだったが、バラも栽培された。与謝蕪村の俳句に「愁ひつつ岡にのぼれば花いばら」「花いばら故郷の路に似たるかな」がある。
気流子がバラで思い出すのは「薔薇」という漢字。学生時代、この難しい字を何とか覚えようと悪戦苦闘した。それだけこの字が不思議な魅力をたたえていたのである。今でも辞書を見なくても書ける。
クイズ番組の漢字の書き取り問題でも出題されたことがあると記憶している。花もそうだが、漢字も目立つ字であることは間違いない。岩波書店の国語辞典『広辞苑』には「いくつかの原種が東西で古くから観賞されてきたが、一九世紀以後に莫大な数の品種が作られ、世界中で栽培される」などとある。
最近ではインターネットで検索するため、辞書を引くことが少なくなった。が、ネットの情報は玉石混淆(こんこう)で辞書は手放せない。昭和30(1955)年のきょうは『広辞苑』の初版が刊行された日である。