津波避難ビル、「機能するか訓練で検証を」


震災教訓に指定が急増、ホームセンターなど民間施設も

津波避難ビル、「機能するか訓練で検証を」

津波避難ビルに指定された立体駐車場=18日、静岡市

 東日本大震災を教訓に、住民が津波から一時的に逃げる津波避難ビルの指定が各地で進んだ。南海トラフ地震などで甚大な津波被害が想定される地域では、学校などの公共施設に加え、ホームセンターやホテルといった民間施設の指定が急増。専門家は今後の課題として、訓練を通じて災害時に有効な避難先として機能するかを検証する必要性を指摘する。

 津波からの避難は徒歩が原則。安全な高台まで距離がある地域では、一定の高さがある建物への迅速な避難が重要だ。内閣府によると、避難ビルに指定された建物と、津波対策に特化した避難タワーは2018年8月時点で合わせて約1万5000棟。11年10月の約4000棟から3倍以上に増えている。

 静岡市は、南海トラフ地震に備えた津波対策として、避難タワーの建設に加え、民間の商業施設や立体駐車場を避難ビルに指定。20年11月には、計画していた最後の避難タワーが完成し、安全な場所へ逃げるのが難しい「避難困難区域」を全て解消した。

 市の担当者は「最大級の津波も想定して施設の整備を進めてきた」と説明。指定した民間施設には助成金を出し、屋上に避難するための外階段の整備や、夜間の避難に対応する照明設備の設置といった機能充実を支援している。

 平らな土地が広がる北海道釧路市では113棟の避難ビルを整備。日本海溝・千島海溝地震による津波に備え、寒さをしのぐブランケットなど、冬季の被災を念頭にした防寒具を備蓄している。市の担当幹部は「揺れたらすぐに高い場所へ避難することをさらに周知していく必要がある」と強調する。

 防災システム研究所の山村武彦所長は避難ビルの指定が増えていることについて、「住民には一定の安心感がある」と評価。ただ、新型コロナウイルスの影響もあり、防災訓練などでの活用が進んでいないケースもあるという。南海トラフ地震では、発生から数分間で津波が到達する地域もあり、避難経路上にある建物の倒壊も予想される。山村氏は「一度でも訓練をしていないと、いざというときに使うことはできない。安全に避難できるのか、経路などを事前に確認しなければならない」と、自治体に取り組みの強化を呼び掛けた。