米中首脳オンライン会談、つかの間の緊張緩和
中国が譲れない問題で対立が浮き彫りに、競争長期化へ
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が臨んだ初のオンライン会談は、緊張緩和のムードが演出された。一方、台湾など中国が譲れない問題では根深い対立が浮き彫りに。バイデン氏が「民主主義対専制主義」と呼ぶ米中間の競争は長期化が避けられず、両国は競争が紛争に陥らないよう「共通認識に基づくガードレール」の構築を模索した。
◇「老朋友」
習氏は会談冒頭、スクリーン越しのバイデン氏に「『老朋友』にお目にかかれて大変うれしい」と笑顔で語りかけた。「老朋友」は親しみを込め古くからの友人を指す言葉。副主席時代の習氏とオバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏は、相互に訪問して会談を重ねた。「弱腰」姿勢を見せられないバイデン氏がメディア取材に「(習氏は)古い友人ではない」と否定しているのを承知の上で、機先を制した格好だ。
米研究機関「東西センター」のデニー・ロイ上級研究員は、「両首脳は今回の会談で、強硬姿勢を求める国内向けの得点稼ぎの機会ではなく、米中関係の管理に主眼を置いた」と分析。激しい応酬となった3月の米アラスカ州での米中高官協議とは対照的だと指摘した。
◇レッドライン
中国側は両首脳の「初顔合わせ」が物別れに終わらないよう、譲れない一線の「レッドライン」を説明してきた。王毅国務委員兼外相は7月、天津で行ったシャーマン米国務副長官との会談で、三つの「最低ライン」の要求を提示。最初に掲げたのが「中国の社会主義制度の転覆を図ってはならない」という項目だ。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は今月のCNNテレビで、過去の対中政策の誤りは「中国の制度上の抜本的転換」を期待したことだと指摘し、「それはバイデン政権の目的ではない」と表明した。中国側は好意的に受け止め、共産党機関紙・人民日報系の環球時報は9日の社説で「歓迎に値する」と記した。中国外務省によると、首脳会談でバイデン氏は「米側は中国の体制転換を求めない」と確認したという。
中国は「内政の季節」に入っている。先の第19期中央委員会第6回総会(6中総会)は習氏の権威付けを図る第三の歴史決議を採択。来年2月の北京冬季五輪を成功させ、習氏の3期目入りが確実視される来年秋の共産党大会を迎える青写真を描く。外交・経済分野で影響力が大きい米中対立を管理可能な範囲にとどめ、体制の安定を維持することは習指導部にとって至上命令だ。
◇ガードレール
王氏の三つの要求のうち、「中国の発展を阻害するな」「国家主権を侵犯するな」という項目をめぐり、両首脳の主張はかみ合わなかった。中国の経済的・軍事的台頭に伴い、米国では対中強硬論が超党派の一致点となり、長期的な対立は必至。米国は世界を巻き込み「対中包囲網」形成に動いている。
ホワイトハウスが発表した声明によると、バイデン氏は会談で、同盟・友好国と共に米国の利益や価値を守ると強調した。習氏は冷戦時代を想起させる「陣営」という言葉を用いて包囲網に反対しつつ、「中米関係が脱線してコントロールを失うのを防ぐ」必要性に言及した。バイデン氏が唱えた「ガードレール」に同調した格好だ。
バイデン氏は12月9、10両日に民主主義国指導者らを集めた「民主主義サミット」をオンラインで開催する予定。専制主義に対する備えなどをテーマに掲げる。米メディアによると台湾も招待されており、中国を刺激するのは必至だ。(ワシントン、北京時事)