朴槿恵大統領の「統一は大当たり」発言が話題
韓国の朴槿恵大統領が新年の記者会見で「南北統一は大当たりになると思う」と述べてから1カ月以上が過ぎたが、マスコミや識者を中心にこの発言が話題になり続けている。来年は分断から70年、「韓半島の春」を求める機運は高まるのだろうか。
(ソウル・上田勇実)
肯定世論6割、政府「4年が分水嶺」
韓国 G7入り可能の予測も
朴大統領の「統一は大当たり」発言の趣旨は「費用負担ではなく、経済大跳躍のチャンス」というものだが、この「大当たり」は比較的慎重に言葉を選ぶ朴大統領にしては珍しく直感に訴える言葉だった。韓国語では「スゴイッ」と日常的に使う感情表現の語感を含んだ言葉でもあったためか、予想以上に話題を振りまいている。
発言が単なる新年のリップサービスではないと思えるのは、昨年末に北朝鮮ナンバー2の張成沢・朝鮮労働党行政部長が処刑され、北朝鮮情勢が予測困難になっているという認識が広がっているためだ。ひょっとして北朝鮮で急変事態が発生するのではないか、それをきっかけに統一が現実味を帯び始めるのではないかという少々先走った“予感”を抱かせているようだ。
このほど実施されたある世論調査によると、朴大統領の発言について「非常に共感する」(25・4%)と「ある程度共感する」(37・3%)を合わせ6割以上が「共感する」と答えている。「あまり共感しない」(19・0%)と「全く共感しない」(14・3%)を合わせた「共感しない」(33・3%)の約2倍だ。
また、統一がどのような形でなされる可能性が高いかを問う質問に対しては「漸進的合意による統一」(36・1%)が最も多く、「北朝鮮の急変事態後に韓国が吸収統一」(31・9%)がそれに次いで多かった。
一つ興味深いのは、この質問に「北朝鮮は急変事態後に中国に編入され、韓半島統一は困難」とする回答も2割以上に達していることだ。北東アジアで日米韓を中心とする自由民主主義圏と対峙(たいじ)する中国が、北朝鮮を事実上の自国領に編入し、半島分断の半永久化がさらに続くというのは、韓国にとって望ましくないシナリオだろう。
政府も朴大統領の発言を受け、「今後4年間が平和統一の分水嶺になる」(外交省)とし、現政権任期内の成果に意欲を示した。
韓国で統一の機運が最も高まったのは、2000年に初めて南北首脳会談が行われた時だ。だが、当時は表面的な南北融和の雰囲気に酔いしれ、「金正日総書記はいい人かもしれない」などという“色眼鏡”で北朝鮮を眺める若者も増え、北朝鮮体制の本質が見えなくなったまま「北朝鮮ペース」の統一に韓国が巻き込まれそうになった。もし、今回、再び統一の機運が高まるとすれば、全く違った形が予想される。
朴大統領が指摘した「経済大跳躍のチャンス」とはどのようなものか。大手紙・朝鮮日報の連載「統一が未来だ」は、今年に南北間の統合が始まった場合、2030年には「統一韓国」がGDP(国内総生産)で英国、フランスを抜き、G7の仲間入りをするというシンクタンクの予測を紹介している。
このほか「国家格付けが世界最上位にジャンプ」「北の観光施設に4兆ウォン(約4000万円)投資したら年間40兆(約4兆円)儲(もう)かる」といった「バラ色予測」もみられる。最終的には統一費用の負担との差し引きになるが、経済波及効果を期待する声は多い。