イランで大統領選を実施、8年ぶりの政権交代か


反米強硬派ライシ師が圧倒的に優勢、米国との協議に影響か

イランで大統領選を実施、8年ぶりの政権交代か

テヘランの街中に掲げられたイランの保守強硬派ライシ司法府代表の選挙用垂れ幕=5月17日、テヘラン(AFP時事)

イランの保守強硬派の重鎮ライシ司法府代表=5月15日、テヘラン(EPA時事)

イランで大統領選を実施、8年ぶりの政権交代か

テヘランで、イラン大統領選の投票を行う女性=18日、テヘラン(時事)

 イランで18日、保守穏健派ロウハニ大統領の任期満了に伴う大統領選が実施された。国内世論調査機関によると、反米の最高指導者ハメネイ師に近い保守強硬派重鎮のライシ司法府代表(60)が圧倒的な優勢を保っている。8年ぶりに強硬派が政権奪還する可能性が高まっている。

 イランの当日有権者数は約5930万人。大勢判明は早くても19日以降になるとみられる。過半数を獲得した候補が当選し、該当者がいなければ25日に決選投票が行われる。

 今回の大統領選では、候補者の資格を事前に審査する「護憲評議会」が強硬派を中心に7人の立候補を認めた。このうち強硬派2人と穏健派1人の計3人が16日に撤退。強硬派がライシ師に支持を一本化する動きを加速させたことで、政権交代の現実味が一段と増している。

 テヘラン市内で投票した会社員メフディさん(47)は「ライシ師は他の候補より資質があり、変革ができると期待している。ロウハニ政権は公約を実現できなかった」と話した。一方、強硬派の圧勝ムードに伴い市民の関心は低く、大学生ケイバンさん(22)は「経済が好転するとは思えない。不満の意思表示になるよう投票はしない」と冷ややかに語った。

 ライシ師は検事総長やイスラム教シーア派聖地の聖廟財団トップなどを歴任後、2017年の前回大統領選に出馬。しかし、現職のロウハニ大統領に大敗し、今回は雪辱戦となった。政治経験に乏しいものの、ハメネイ師に任命された司法府トップとして汚職摘発を進めた実績を強調。国民の不満が強い経済不況への対策では雇用創出などを公約し、米国の制裁や新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた経済の立て直しを掲げる。

 対外融和による経済発展を目指しながら果たせなかったロウハニ政権への不満から、イラン国内では強硬派の発言力が強まる一方だ。昨年2月の国会選挙での大勝に続き、強硬派が大統領に就けば、現政権が進めた国際協調を軽視し、挑発や緊張を高めて譲歩を引き出そうとする路線に傾斜する恐れもある。

 ライシ師は「抑圧的な制裁の解除へ努力を惜しまない」と主張。「核合意は最高指導者が認めており尊重する」とも述べたが、選挙の行方は米国との間接協議を通じた合意再建協議にも影響を及ぼしかねない。(テヘラン時事)