<梅雨の月があって白い花> 種田山頭火。…


 <梅雨の月があって白い花> 種田山頭火。十字の星を散らしたように地面に広がる純白の花とやや濃い緑葉のコントラストに目を奪われる季節になった。その花名のために随分損をしているドクダミである。

 旺盛な生命力が示すように昔から薬草として重宝されてきた。揉んで付ける葉は、おできや火傷に効く皮膚薬となる。煎じて茶として飲むと、動脈硬化を予防し便秘にもいいという。

 ドクダミだけではない。梅雨時にはなぜか白い花が映える。ジャスミンはその芳香で茶としても愛飲され、花が白い手裏剣に見えるヤマボウシ、卯の花にナツツバキ、ハナショウブ、カラー、水辺のスイレンなど。

 アジサイも七変化の色が付く盛りの前は白か薄いクリーム色が多い。花を愛でれば梅雨もそんなに悪くはないと思えてくるが、今年の東京の梅雨入りはまだである。先月15日に九州北部、中国、四国、16日に近畿、東海と次々に梅雨入り(気象庁速報値)した。どこも平年より約3週間早い記録的な梅雨入り。

 続いてすぐに東京もと思われたが、そこで滞ったまま6月に入った。平年は7日あたりの梅雨入りだから結局、平年並みとなりそうだ。

 東京で今年、春一番が吹いたのは統計史上最も早い2月4日。サクラの開花も史上最も早かった昨年と並びホワイトデーの3月14日。ツツジやフジも平年を半月以上前倒しの開花で、アジサイも今が盛りだ。自然の営みが先行している。