作家・佐伯泰英さんの大ヒットシリーズ『新…


 作家・佐伯泰英さんの大ヒットシリーズ『新・吉原裏同心抄』は寛政の改革期の江戸が舞台。主人公で、遊里吉原の警護に当たる神守幹次郎が修業のため京に足を踏み入れ、江戸にはない変化に驚く。

 西国の雄藩や国持の外様大名が次々と藩邸を設け、経済的利権を得ようと競っている様子を見聞きするのだ。時代の節目となった江戸後期の武家の姿を人気作家が巧みに切り取った。

 そんな慌ただしさを今、世界的規模で見せているのが、アフター・コロナを見据えた各国の技術開発競争。水素エネルギー、電気自動車、人工知能(AI)戦略など先端技術と脱炭素の環境技術のタイアップを唱道し、経済の主導権を握ろうとする目まぐるしいほどの動きだ。

 その実現のため、各国は温室効果ガスを排出しない原子力発電の利用が必須と考え、再評価を進めている。米国では95基の原発が稼働し、世界最大のエネルギー消費国の中国では大規模な増設。欧州ではフランスが電力の70%以上を原発で賄い、英国でも増設、東欧も新設の方針だ。

 一方、わが国は「安全最優先で原子力政策を進める」(菅義偉首相)としながら、原発再稼働は依然最小限に止(とど)まっている。これに対し、経団連は3月発表の電力政策に関する提言に、原発の着実な再稼働、新増設の重要性を明記した。

 脱炭素と技術革新に向け、日本にはバスに乗り遅れるな式の競争参入より、まず確かな原子力政策の推進が求められる。