ウクライナ出身の映画監督セルゲイ・ロズニツァ…


 ウクライナ出身の映画監督セルゲイ・ロズニツァさんのドキュメンタリー映画「粛清裁判」「国葬」他1本の試写会があった。ソ連スターリン時代の国情を描いたもので、当時の記録フィルムを再構成している。

 「粛清裁判」は技師らに対するスターリンの見せしめ裁判で、大粛清の始まりを暗示する“儀式”のよう。「国葬」は全国各地で催されたスターリンの追悼式の模様を映す。当時、映画が世論操作で重用されていたのだろう。

 スターリンが亡くなったのは1953年。国葬には中国の周恩来ら東側諸国の要人が顔を見せており、ソ連が共産国としてすでに世界的基盤を持っていたことが分かる。ずいぶん昔の話のようだが、意外と近しい感じもする。

 日本公開におけるテーマは「群衆」。映画を観た池田嘉郎・東大大学院人文社会系研究科准教授は「有無を言わさぬ権力行使は、それを支える民衆がいたからこそ可能であった」と。食い入るように裁判を傍聴する民衆のまなざし、国父を悼む少年少女らの途方に暮れた表情に、今のわれわれは何を見るか。

 スターリンと言わず独裁者は同様で、今の中国も民衆の歓心を買うのに躍起だ。その一方で他国内の世論の分断工作にも余念がない。

 沖縄・石垣市議会は尖閣諸島に上陸し視察と調査を行う決議を可決した。市民の草の根運動、団結は、中国には嫌なものだろう。映画は11月14日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで。