「ウィズコロナ」の心構え ストレスためず免疫力強く

《 記 者 の 視 点 》

 国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が公表された今年1月以降、筆者が自分の感染を疑ったことが2度ある。

 最初は2月下旬。微熱、倦怠(けんたい)感、咳(せき)、喉の痛みの症状が出たので、「コロナでは」と不安になった。発熱がある患者については、病院がクラスターを恐れて受診を拒否する、という情報が流れたが、かかりつけの耳鼻咽喉科クリニックは予約を入れると、スムーズに受診することができ、抗生物質の処方を受けて帰宅した。

 症状は数日で治まった。「かぜだったのだろう」と安心したが、念のため、しばらく在宅勤務を続けた。もちろん、周囲に陽性者は出なかった。ただ、感染者の多くは無症状あるいはかぜのような症状で治まるというから、筆者が感染した可能性はゼロとは言えない。

 8月初め、厚生労働省が運用する陽性者との接触確認アプリ「COCOA(ココア)」で「接触」通知を受けた。接触したのは、その1週間前だった。

 この場合の接触は、1メートル以内に15分以上いたという意味。スマホのブルートゥース(近距離無線通信規格)で該当のスマホ同士が記憶し、PCR検査で陽性となった利用者が保健所から発行された「処理番号」を入力すると、該当スマホに通知が届く仕組みだ。接触場所は、電車か外食時の可能性が高い。周囲に陽性者は出ていないのだから。

 通知を受けた側の対応は、症状「あり」「なし」で分かれる。ありの人は帰国者・接触者相談センター等に予約を入れ受診する。なしの人は2週間、体調の変化に気を付ける。筆者は症状がなかったが、念のため、その期間は可能な限り人との接触を避けた。

 ココアのダウンロード件数は1200万件。単純計算だが、日本人10人に1人だ。しかし、そのうちの新規陽性者が全て処理番号を入力するとは限らない。だから、ココアで通知が届く確率は相当低い。一方で、無症状者もかなり存在するのだから、東京近郊で働く人間がウイルスに罹っている人と接触する確率は日増しに高くなっている。それが「ウィズコロナ」の現実だ。

 では、マスクをしていたとしても、陽性者と1メートル以内に15分以上も一緒にいて、筆者に症状が出ないことをどう考えたらいいのだろう。

 ウイルスの感染力は思ったほど強くなくて感染しなかったのか。それとも筆者に罹(かか)ったウイルスを撃退してしまう抵抗力が備わっていたのか。2月末にかぜのような症状が出た時、本当は感染していたが、抗体ができたおかげで、陽性者と接触の時に罹ったウイルスをやっつけてしまったのかもしれない。

 まあ、いろいろ考えられるが、出ない答えを求めることはストレスをためて免疫力を弱めるだけ。それよりも、感染に細心の注意を払いつつも発表される陽性者数に一喜一憂せず、収束後にやって来る新たな社会を思い描きながら前向きに生きた方がいい。免疫を高める秘訣(ひけつ)は笑いにある、と専門家が異口同音に言っているではないか。

 社会部長 森田 清策