贅沢な内装、厚さ1㍍の外壁 平壌近郊の金正恩氏別荘


特報’18

 北朝鮮・平壌の近郊に位置する最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の「特閣」(専用別荘)は内部が贅沢(ぜいたく)な作りで、選抜された若い女性軍人30人が常駐しながら世話をしている――。特閣リモデリング工事に動員された元北朝鮮軍人は14日、世界日報のインタビューに応じ、一般住民の生活水準とはあまりにも懸け離れた指導者の享楽ぶりを明らかにした。近年の「特閣」内部構造が明らかになるのは異例のことだ。(ソウル・上田勇実)

リモデリング施工の脱北者暴露
「美女」30人が世話も

 元軍人は金委員長の義理の叔父で2013年に処刑された張成沢氏が生前、部長のポストにいた朝鮮労働党行政部の傘下にある特殊工兵旅団に所属し、その後、脱北して昨年3月に韓国入りした20代後半の男性リ・ヒョク氏(仮名)。入隊した年の09年12月から10年6月までの約7カ月間、平壌の南西約30㌔にある台城湖(平安南道南西部)のほとりにある特閣のリモデリング工事に動員され、当時の最高指導者、金正日総書記とその家族の寝室や居間が入る建物を担当したという。

300

 特閣は金日成主席の時代だった1960年代に造られ、男性が動員されたリモデリングは2度目。現在は金委員長が使用しているとみられる。

 リ氏によると、建物は地上2階、地下1階建ての洋風建築。2階に金総書記と夫人、息子、娘の各寝室が1部屋ずつと居間1部屋の計5部屋がある4LDK。金総書記と廊下を挟んでそのすぐ向かいにある夫人の寝室はいずれも広さが約70平方㍍で窓はなく、二つの部屋は対称の作りになっている。

 部屋にはテレビやワインボトルなどを置く豪華なキャビネットと鮮やかな花瓶や美術品を飾ったウォールシェルフ(壁棚)がL字型で壁側に設置され、カラオケ機器もあり、工事後にソファやベッドが搬入された。

 部屋にはさらに一続きの壁で仕切られた別のスペースがあり、自動按摩(あんま)機があるシャワー室やマッサージルーム、トイレが備え付けられた。

特閣

平壌近郊の台城湖のほとりにある金正日(金正恩)氏の「特閣」。右上の棟が寝室のある建物

 2階へはエレベーターか階段で移動し、全館が間接照明。ダイニングルームの天井には木蓮の花を模(かたど)ったコンクリート彫刻が施されている。

 200㍍ほど離れた別棟には別荘全体を管理・運営する10代後半から20代前半の女性軍人30人ほどが暮らす全個室型の管理寄宿舎があり、いずれも「金正恩氏がお好みの音楽ユニット牡丹峰楽団のメンバーのような美女ばかり」(リ氏)で、金総書記の世話をする専属メンバーもいたという。

 耐震設計のほか外敵の攻撃を防ぐ工夫も施された。建物の外壁には特殊鉄筋が埋め込まれ、厚さも砲撃に耐えられるよう通常の4倍である1㍍の厚さにされた。また湖側から見えないようにするため渡り廊下でつながるすぐ前の棟を地上3階建てにし、後の棟より高くされた。

叔父・張氏が工費負担
動員4000人、敷地内で寝起き

 工事は全国の特閣に対するリモデリング指示が出されたことで実施され、リ氏が動員された特閣の場合、張成沢氏が工費を全額負担。工事現場には仕事中の軍人の数が減る夜間、妻の金敬姫・党軽工業部長が金委員長の妹、与正氏(現、党政治局員候補)と一緒に現れ、差し入れのパンを配って激励したこともあった。

800

 工事関係者の間でこの特閣は「127号」と呼ばれていた。ただ、「金正日総書記や金正恩委員長など最高指導者が使う別荘には通常二桁の数字が付けられている」(北朝鮮情報筋)といい、秘密保持のため意図的に三桁の数字で呼ばせていた可能性がある。

 また工事は秘密保持のため担当現場以外への出入りを厳しく制限され、現場に入る時は撮影できないように携帯電話の使用が禁じられた。リ氏は担当の2階に上がる際に1階部分の構造を確認できたが、地下には一度も行けなかったという。

 工事には約4000人が動員され、工期を短縮するため党中央所属の特殊建設旅団も一緒に加わった。全員が工事が終わるまで特閣の敷地内で寝起きし、敷地外に出ることを禁じられた。

 北朝鮮では建設機材が不足し、工事は人力で行うことが多く、特閣リモデリングも例外ではなかったようだ。リ氏は工事による疲労が重なり、アルコールを女性軍人から融通してもらい、水に混ぜて50度くらいにしたものを飲み、眠りについたこともあったという。 リ氏は特閣工事が終わった後も東北アジア銀行など平壌市内の建造物で仕事をしたが、張氏が処刑されるとリ氏も民族反逆者の部隊にいたなどと言いがかりをつけられて検閲を受け、最後は脱北に追い込まれたという。