日韓政府が調整、「癒し金」後に少女像移転


世論見極め追悼施設に

 いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる昨年末の日韓合意を受け、まず韓国が日本側から拠出される10億円を受領し、その半分の約5億円を元慰安婦とその遺族に「癒し金」として届けた後、世論の沈静化を待って在ソウル日本大使館前の少女像を移転することで両国政府が調整中であることが関係者への取材で分かった。「慰安婦」合意が履行に向け動き出すか注目される。

 関係者によると、支援財団は日本政府から10億円を受け取り次第、正式に財団を設立。これを基金としてプールし、このうち約5億円を「癒し金」の名目で元慰安婦らに個別に届ける方針だ。対象は韓国政府が認定している元慰安婦のうち現在、生存している40人とすでに他界した人の遺族。

 これまで元慰安婦らは同問題で反日デモを主導してきた左派系市民団体「挺身隊問題対策協議会(挺対協)」の影響を強く受け、日韓合意自体を無効すべきとする主張に同調してきた。

 これに対し財団準備委員会の金兌玄委員長や外交省職員らは元慰安婦を直接訪問して日韓合意の趣旨を伝えている。合意にある日本政府としての「責任」や安倍晋三首相の「おわびと反省」が名誉回復につながり、日本政府予算による「10億円程度の拠出」が「事実上の賠償」だと説明、これに納得し「癒し金」受け取りに同意する人も増えているという。

 日本では少女像撤去を10億円拠出の前提条件にするよう求める声も根強いが、前提条件にした場合、韓国世論が悪化し合意履行そのものが暗礁に乗り上げる恐れがあることに日本側が一定の理解を示した模様だ。

 韓国側は「癒し金」を届けた後に国内世論が沈静化するのを見極めた上で、支援財団の事業の一環として設置される追悼施設に少女像を移転したい考えだ。

 ただ、実際に移転がスムーズに行われるかは不透明。挺対協だけでなく少女像を慰安婦問題解決に向けた“聖地”とみなす過激な反日派が実力阻止に出る可能性もある。挺対協は慰安婦支援財団に対抗する「正義記憶財団」を先月設立。政府との間で元慰安婦の「争奪戦」を展開している。

(ソウル上田勇実)