韓国左派、沈没事故で反政府扇動
来月地方選へ世論誘導か
韓国旅客船沈没事故から1カ月が経(た)とうとしているが、各地の追悼集会などで左派が政権退陣運動を扇動しているとの指摘が上がっている。事故は政府・与党にとって逆風だが、来月4日の統一地方選を前にさらに反政府世論を広めようとしているようだ。(ソウル・上田勇実)
追悼集会に「朴槿恵退陣」スローガン
事故現場では現在も救助活動が続いているが、安否不明300人余りのうちほとんど大半の犠牲者が確認され、各地で追悼集会が相次いでいる。だが、純粋な気持ちで犠牲者の冥福を祈る人たちに交じり、左派が朴槿恵大統領批判を始めたとして、保守系メディアがこれを叩(たた)いている。
修学旅行中に難に遭い、多くが犠牲になった高校のある京畿道安山やソウルでは先週末、事故後初めてとなる大規模追悼集会が行われたが、安山の集会では過激なデモで有名な全国民主労働組合総連盟(民主労総)傘下の労組員が「朴槿恵退陣」のプラカードを手にし、集会後の行進では「違法当選の朴槿恵辞退、李明博(前大統領)逮捕」などという政治的スローガンが叫ばれたという。
また、ソウル中心街で行われた追悼集会でも同じように政権退陣を求める声が上がった。集会の主催者は、前述の民主労総をはじめ反保守運動に熱心な市民団体・参与連帯、一昨年に幹部が無断訪朝し国家保安法違反で有罪判決を受けた祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部、数々のスパイ事件で容疑者をかばったとの疑惑が持たれている民主社会のための弁護士会(民弁)など。文字通り「左派が総結集した」(韓国紙)場となったようだ。
2008年、李明博政権が米国産牛肉輸入再開に踏み切った際、「輸入牛を食べたら狂牛病にかかるかもしれない」とする科学的根拠に乏しいデマに踊らされた国民をさらにあおるため、政権退陣運動を扇動し、数カ月にわたって国政を麻痺(まひ)させた張本人こそ彼らだ。
今回は、まだそれほど退陣論が拡散しているわけではないが、救助活動をする上でさまざまな面でもたついたと批判されている政府や海洋警察の「ふがいなさ」がクローズアップされたり、一部遺族がやり場のない怒りを政府にぶつけようとするなど、反政府世論が浮上する雰囲気に便乗し、これを政治的に利用しようという“手法”は同じだ。
北朝鮮メディアが、韓国国内で反政府運動が起きていることを伝え、“援護射撃”するのも同じパターンである。
親北反米の偏向教育で悪名高い全国教職員労働組合(全教組)が、犠牲者を追悼するためホームページにアップした広報ビデオも物議を醸している。ビデオには事故現場の映像などをバックにナレーションを流し、事故について「無能な政治による他殺」「利潤だけを追求する資本(家)と公権力による“挟殺”」と語り、政権への憎悪感をあおる言葉をちりばめている。
そもそも「韓国左派は隙あれば保守政権に対する退陣運動を引き起こそうと狙っている」(元公安検事)ものだが、今回の場合は特に来月の統一地方選に向けた世論誘導という性格を帯びている。事故後、各種世論調査で朴大統領や与党セヌリ党への支持率は軒並み下落傾向にあり、事故を利用し、あわよくば形勢をひっくり返そうという魂胆とみられる。