政府 朝鮮系幼稚園の無償化検討
10月から始まった幼児教育・保育の無償化から在日朝鮮人世帯の幼児が多数通う朝鮮学校系幼稚園が除外されたことをめぐり、膠着(こうちゃく)状態にある日本と北朝鮮の政府間交渉を再開させる呼び水として政府が除外見直しを検討し始めたことが分かった。5日、日朝関係筋が本紙に明らかにした。安倍晋三首相が開催を呼び掛けている金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を見据えた動きとみられる。(編集委員・上田勇実)
政府 日朝交渉再開へ除外見直し
「拉致」見通せず反対も
同筋によると、このほど北朝鮮の宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使ら対日機関の幹部らは無償化除外を見直すよう非公式ルートを通じ日本側に伝えてきた。宋大使らは5月に安倍首相が無条件の日朝首脳会談を呼び掛ける一方、朝鮮学校系幼稚園を無償化から除外したことに強い不満を表明したという。
これを受け政府内では「まだ年齢的に思想教育の影響が限定的と思われる幼児教育なら無償化の対象にしても世論の反対を受けにくい」(同筋)との意見が出始め、朝鮮学校系の幼保無償化除外の見直しを日朝交渉再開のカードにする案が浮上しているという。
幼保無償化の対象外となっているのは「各種学校」に分類される全国80以上の施設で、このうち半数近い40施設が朝鮮初級学校(小学校に相当)付設の幼級部(幼稚園)など朝鮮学校系。これらを無償化するには大掛かりな法改正などが必要なため、該当幼稚園を「附属施設ではなく収益事業」(同筋)として特例的に扱った上で無償化の申請を受け付けることなどが検討されているという。
無償化除外をめぐっては無償化の財源が10月の消費税率2%アップ分であることから、幼児の保護者らが消費税を同様に負担しながら無償化から外されるのは不公平などとして朝鮮学校関係者は反発を強めている。
ただ、たとえ未就学児の教育であっても、これまで金正恩氏称賛や歴史観の違いを盾にした反日教育などが繰り返し行われてきた朝鮮学校系に対する無償化に国民の理解がどこまで得られるかは不透明。安倍首相が日朝間の最重要課題に位置付けている日本人拉致問題の解決への糸口が見えない段階での交渉再開には反対も予想される。