日米同盟強化に有事リスクも適正な分担を 民主党副幹事長 長島昭久氏(下)


2014世界はどう動く
識者に聞く(21)

400 ――安定した日米同盟関係を構築するには?

 米国が危機に瀕(ひん)した時、日本は米国を助ける条約上の義務を負っていない。しかし、本当の友人というのは、危機の時に分かる。調子のいい時だけ付き合って、自分の身が危なくなれば逃げ出すような輩は、とても真の友人とは言えない。

 そういうことからすると、米側から見ても不公平な条文になっている。

 日本が平時のコストを減らしたいのだったら、ある程度、有事のリスクを取っていく。そういう努力をしない限り、バランスしない。

 私の考える理想の日米同盟は、有事の時も一緒に戦う。その代わり、平時のコストもアメリカ側と日本が応分の負担をし合う。「有事のリスクを米が負い、平時のコストを日本が払う」といった現実からステップアップし「有事のリスクも平時のコスト」も適正に配分する。それでこそ、持続可能で安定した同盟関係が保障される。

 一朝一夕にはできないけれど、将来的には、安保条約5条、6条の規定を変えるぐらいの日本側の覚悟が必要だ。その前提として、集団的自衛権の行使を認めていく。そうした関係を構築して初めて安定した日米同盟関係を築ける。

 こうした歴史的課題を解決すべき時が熟して来たと私は考えている。それは単なるナショナリズムへの迎合のためではなく、眼前の厳しい国際情勢を直視したリアリズムの帰結だ。

 アジア太平洋秩序を安定させるためには、確かなパワーバランス(力の均衡)が必要となる。

 そのためには、日本に軍事的な揺さぶりをかけてくる相手より強靭(きょうじん)で安定していなくては、いざという時に役に立たず抑止効果は薄れてしまう。だから同盟関係も、相手に隙を与えるような不安定な状況を放置することは許されない。その意味で、私は常々、日米同盟の基本構造が抱えている脆弱(ぜいじゃく)性に懸念を持ってきた。

 その日米関係が安定して、初めてアジア太平洋地域が安定する。なぜならばアジア太平洋の国々は、日米同盟の様々な活動を前提に外交政策や安保政策を構築しているからだ。ここが不安定になれば地域の不安定を招くのは必至だ。

 ――そのアジア太平洋地域において中国が米国外しに動いている。韓国の朴槿恵大統領はまんまとその罠にひっかかった?

 私もその問題意識を共有する。

 蒙古襲来に見られるように、わが国は歴史的に朝鮮半島から脅威を受けてきた。日清戦争も日露戦争も朝鮮半島が舞台だ。朝鮮半島の安定は、日本にとって死活的に大事なところだ。逆に言うと、中国を中心とするアジアの安全保障上の懸念に対応していくためには、日韓関係が重要となる。

 安倍首相の地球儀外交を評価したい。私は「遠交近衡」外交(中国古典の戦国策に出てくる「遠交近攻」策を応用し、目的を「攻」撃ではなく勢力均「衡」に置いた長島氏の造語)と言っているが、先ず遠い国と関係を構築し最後に残った課題を解決していくという手法は間違っていない。

 わが国もようやく自己改革というか、自分たちで変えないといけないという動きが出てきたことは正当に評価すべきことだと思う。

(聞き手=池永達夫)

=終わり=