「門外不出」の梅、福島の高校に


太宰府天満宮「元気届けたい」

「門外不出」の梅、福島の高校に

福島高校に贈られる太宰府天満宮の梅の若木=2013年12月23日、福岡県太宰府市の太宰府天満宮

 学問の神様、菅原道真を祭る太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の梅の木が2月、福島市の福島高校に贈られる。神社以外に譲り渡されるのは極めて異例だ。東京電力福島第1原発事故の影響が続く中、福島の将来を担う若者を励ましたいという同校OBと天満宮側の思いが重なった。

OB奔走、宮司動かす

 今春卒業する高校3年生は中学の卒業式当日、東日本大震災に見舞われた。地震で校舎が損壊し、避難所にもなった福島高校。生徒は体育館や仮設校舎での授業などで不便を強いられた。

 「ここで学んだ3年間の誇りを感じてもらうため、できることはないか」。同校卒でガス供給会社社長の篠木雄司さん(51)=福島市=はかつての級友と話し合った。同校は梅の花が校章で「梅校」とも呼ばれる。「梅を植樹しよう」「できれば太宰府の梅を」。厳寒風雪に耐え、百花に先駆け花を咲かせる梅の姿と現況を重ね合わせ、級友の意見が一致した。

 篠木さんは地元の神社関係者に相談したが、「ご神木を譲り受けるのは到底無理」と言われた。諦め切れず、2013年6月にアポなしで太宰府天満宮を訪問。福島の子供たちの様子をつづった手紙を職員に渡した。

 太宰府天満宮は被災者支援のため、西高辻信良宮司(60)らが何度も東北に入っていた。同校OBで福島市の神社宮司の力添えもあり、西高辻宮司は程なく、梅の若木5本を譲ることを承諾。うち1本は種類不明の木で、福島高校が名付け親になってほしいという「計らい」もあった。

 地元で協力の輪も広がった。福島-太宰府は往復約2800キロ。どのように運ぶかが難題だったが、同校のOBが社長を務める運送会社が名乗りを上げた。梅の由来を刻んだ石碑の建立には別のOBが協力。一連の費用は同校同窓会が全面支援することになった。

 植樹式は3年生の卒業式前日、2月28日に開かれる。西高辻宮司も訪れ、生徒らを前に講話をする。宮司は「梅が校章と聞き、縁を感じた。道真公を慕って梅が京都から飛んできた飛梅伝説があるが、今度は逆に西から東へ梅を届け、春一番、元気を皆さんにお伝えできれば」と思いを語る。

 同校の本間稔校長(60)は「3年生は入学式の延期や体育館での80人学級といった不自由を強いられてきた。その卒業生へのはなむけとして大変ありがたい」と話した。