北本市の「絵のある病院」、患者を癒やす
ノーベル賞受賞の北里大特別栄誉教授の大村智さんが提案
今年のノーベル医学生理学賞に選ばれた北里大特別栄誉教授の大村智さん(80)が提案し、設立に尽力した病院が埼玉県北本市にある。1989年に開院した北里大メディカルセンター。大村さんのアイデアで院内には多くの絵画が飾られ、「絵のある病院」として親しまれている。
大村さんは82年、北里研究所に病院設立を提案した。絵画に造詣の深い大村さんは、絵画や音楽などの芸術によって癒やしの効果をもたらす「ヒーリング・アート」を新しい病院に導入。建設費はノーベル賞の受賞理由となった抗寄生虫薬「イベルメクチン」などの特許料を充てた。
ベッド数は372。災害拠点病院に認定され、ヘリポートを備える。廊下や病室などには300~400点の洋画や抽象画を展示。廊下の天井にはレールが備え付けてあり、壁につり下げた絵画を動かして展示作品を定期的に入れ替えている。
病院を運営する北里研究所は、これまでに洋画コンクールを6回開催。病院のコンセプトに賛同した画家から寄贈を受けるなどして展示品を集め、現在は約1700点を所有する。
半年に1回程度、健診で病院を訪れる新井信子さん(76)は「病院は待ち時間が長いが、絵があるので退屈せず過ごせる」と話した。