パラグアイ進出の日系企業を支える「日本語」
移民子孫の存在感が高まる、2世・3世の争奪戦も
南米パラグアイに進出する日本企業が現地の日系社会に注目している。日本語を流ちょうに操る2世や3世の若者が多く「意思疎通が容易で仕事ののみ込みが早い」(造船企業関係者)ためだ。新規に進出した企業の間では、現場のリーダー役を担う日系人材の争奪戦も始まっている。首都アスンシオンのアパートの一室。4人の日系人が日本企業から届いた住宅設計図をデータ化する地道な作業を続けていた。指示書には日本語で注意書きがびっしりと書き込まれている。
日本との連絡窓口を務める日系2世中越エステラさん(30)は、パラグアイ南部のピラポ移住地出身だ。「祖母から日本語の大切さを教わった」という話し方はよどみがない。顔立ちから言葉遣いまで日本育ちの日本人そのものだ。
中越さんらを雇用するのは建築会社「システムデザイン」(横浜市)。同社の新堀耕司社長は2013年、パラグアイ事務所を開設し日系人に作業を発注すると決めた。
日系人口が約7000人のパラグアイは、隣国ブラジルの160万人、ペルーの9万人などと比べ規模は小さいが、日本語の水準は「南米各国の日系移民社会でも屈指のレベル」(外交筋)を誇る。
パラグアイ日本人連合会の前原弘道会長は、1955年以降に入植した戦後移民がパラグアイでは大半で「海を渡った移民1世の多くは健在。家庭内で母国語を使う機会が多い」と説明する。そのため、パラグアイで生まれた日系人子弟同士が「日本語で会話することも珍しくない」と笑顔を見せる。
パラグアイでは2013年に就任したカルテス大統領が海外企業誘致に力を入れている。日本企業の現地進出もこの2年で倍増した。産業の少ないパラグアイの日系人雇用市場が活況を呈するとともに、前原会長は「子供たちの日本語学習意欲の向上にもつながっている」と話している。(アスンシオン時事)