白鵬、「角界の父」大鵬に恩返しの全勝優勝
「目標がなくなって引退か」大きく揺れた心
「角界の父」と慕う大鵬を超える新記録を打ち立てた13日目。白鵬の心は大きく揺れた。「優勝して2日間いろいろ考えた。目標がなくなって引退なのか」。だが、千秋楽結びの一番で鶴竜を寄り切り、全勝優勝できっちりと締めた。「本当に疲れたけど、大鵬親方の32回を超えて真の恩返しができた」。晴れやかな笑みが戻っていた。
右四つ。上手を先に引いたのは白鵬だ。「一枚まわしが伸びたけど、慌てずにいこうと思った」。土俵際まで寄り立てられたが、冷静だった。最後は重心を下げて頭を付け、前まわしをねじり上げるような「万全の体勢」で寄り切った。
32度目の優勝を決めた昨年11月の九州場所とは違う重圧があったという。「不思議な緊張感だった」。終盤には心の迷いを感じながらも、10場所ぶりの全勝優勝。北の湖理事長(元横綱)は「やっぱり重みが違う。記録に箔(はく)がついてよかった」とたたえた。
「大鵬親方の大記録を数字的に超えたと思うが、精神的にはまだまだだと思うので頑張っていきたい」。前人未到の地の先に、白鵬はなお何かを探し続けている。