谷崎潤一郎の未公開書簡を中央公論新社が発表
「細雪」の4姉妹のモデル、妻・松子らと288通が見つかる
近代を代表する文豪・谷崎潤一郎(1886~1965年)と、その大作「細雪(ささめゆき)」に登場する4姉妹のモデルとなった妻・松子やその妹重子との間の未公開書簡288通が見つかり、中央公論新社が25日発表した。書簡は松子との出会いから谷崎の晩年まで続き、円熟期の作品群と、現実の恋愛や生活との関連を具体的に示す貴重な資料となりそうだ。
書簡は遺族が東京都内で保管していた。特に注目されるのは、谷崎から松子宛ての33年5月20日付「誓約」。「夫婦之(の)契(ちぎり)」を許され、「永久に御高恩を不忘(わすれず)」「忠僕として御奉公申上げ」などと記している。
千葉俊二早稲田大教授は「『春琴抄』に御奉公の関係がみられるように谷崎の作品全体に密接に関わっている。伝記の細部を書き直す必要があるほどの発見」としている。
谷崎と大阪・船場の豪商の妻・松子は27年3月に出会い、すぐに引かれ合った。谷崎は作家の佐藤春夫との三角関係を経て、30年に最初の妻と離婚したが、別の女性と再婚。その後、離婚の合意を得て、「誓約」を松子に送った。谷崎は重子へも、2人の恋愛の「証人」となるよう求める4メートル近い巻紙文を送っている。
書簡は谷崎から松子へ89通、重子へ89通、松子から谷崎へ95通、重子から13通など。これらを中心に351通を収めた書簡集が、同社から来年1月に刊行される。