巨大医療汚職事件に迫ったドキュメンタリー


映画「コレクティブ~国家の嘘~」、来月DVD発売へ

巨大医療汚職事件に迫ったドキュメンタリー

4月2日に発売される「コレクティブ」のDVDのジャケット写真

 昨年10月に公開されたドキュメンタリー映画「コレクティブ~国家の嘘~」が、4月2日にDVD化され発売される。

 同作品は、ルーマニア国内を震撼(しんかん)させた巨大医療汚職事件に迫った作品で、2021年アカデミー賞2部門ノミネートのほか、2020年の全米映画批評家協会賞、最優秀外国語映画賞などこれまでに世界各国で32の映画賞を受賞するなど、ドキュメンタリーとは思えない展開は見ているものを驚かせる。

 同作品は、2015年10月30日、ルーマニア・ブカレストのライブハウスで起きた火災を発端に巨大医療汚職事件へ発展する。

 死者27人、負傷者180人を出す大惨事だった火災。最終的には64人が亡くなった。不審に思った地元スポーツ紙の記者が調査を始めると、製薬会社と病院経営者、政府関係者へと広がる癒着の構造が明らかになっていく。事実が報道され始めると市民たちの怒りは頂点に達し、内閣は辞職へと追いやられる。

 新内閣が発足し、正義感溢(あふ)れる保健省大臣の下、改革が試みられるが、予想以上に癒着の闇は深いものだった。

 前半は、地元スポーツ紙の記者や被害者、遺族たちを、後半は、新保健省大臣の姿を追っている。医療と政治という深い関係を突き付ける。

 ルーマニアは、1989年に当時のチャウシェスク独裁政権を打倒し、民主化した国だけに、民主国家としてはまだ成熟しきっていない分、国家権力の強さも残されている。そうしたことも背景に考えるとジャーナリストたちの命を懸けた奮闘の一方で、政治に対するジャーリズムの在り方も問う一作である。

 ドキュメンタリー映画『トトとふたりの姉』で数々の映画賞を獲得しているアレクサンダー・ナナウが監督・撮影を務め、プロデューサーも兼務している。

(佐野富成)