映画「前科者」、更生を助ける保護司にスポット


工藤を森田剛が、彼の更生を助ける阿川を有村架純が演じる

映画「前科者」、更生を助ける保護司にスポット

頑固だが、使命感をもって保護司を務める阿川佳代(有村架純、右)に励まされる工藤誠(森田剛)©2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

 二つの仕事を掛け持つ阿川佳代。コンビニ勤務の傍ら、犯罪者の更生を助ける保護司の仕事を請け負っていた。

 国家公務員だが、報酬は一切ない。それでも黙々と前科者たちを叱咤(しった)激励する。彼女のそんな保護司の仕事に周囲は、「もっと自分の人生を楽しめば」と声を掛ける。そんなある日、一人の前科者を担当することになる。殺人を犯した工藤誠だ。懸命に生きる彼を全力で支える。

 だが、保護観察終了前の最後の面談に現れず、社員登用が決まっていた自動車修理工場からも忽然(こつぜん)と姿を消す。折しも連続殺人事件が発生、捜査線上に工藤が容疑者として浮かぶ。

 このことをきっかけに阿川の隠された過去や保護司になった理由が明かされていく。置いてきた過去に再び向き合う工藤、彼を信じてその更生に全力を注ぐ阿川。二人がたどり着いた先に見えたものとは――。

 原作は、漫画雑誌で連載されていた同名タイトル作品。漫画原作者の香川まさひとは、『監察医朝顔』などを手掛けている。あまり注目されない保護司に焦点を当てた一作で、ドラマ化もされている。映画では、サスペンス要素を加え、よりエンターテインメント性を加味したものとなっている。

 主人公の阿川佳代を有村架純が使命感の強い保護司を真摯(しんし)に演じている。一方、ある理由から殺人を犯してしまった影のある工藤誠を演劇界でも注目を集める森田剛が演じる。

 その他、磯村勇斗、マキタスポーツ、石橋静河、北村有起哉、リリー・フランキー、木村多江ら抑えた演技に定評がある俳優陣が顔をそろえた。

 監督は、2017年に劇作家寺山修司の小説『あゝ、荒野』を手掛け話題となった岸善幸。

 現在、公開中。PG12。