政府、代替ジェット燃料の生産目標を設定
脱炭素加速で来年度から、支援策や供給網の構築など議論へ
航空業界で脱炭素の切り札とされる「持続可能な航空燃料(SAF)」について、政府が2022年度内に今後の生産目標を定める方向で検討に入ったことが24日、分かった。植物などに由来するSAFは二酸化炭素(CO2)の実質的な排出削減につながる。政府は30年に国内航空会社が使うジェット燃料の1割をSAFに置き換える目標を掲げており、生産量についても目標を設定して導入促進を図る。
国土交通、経済産業両省や燃料製造、航空会社などでつくる官民協議会を今春立ち上げる。世界のSAFの生産量は現在、航空機の燃料需要の1%未満。航空業界は鉄道など他の輸送手段に比べCO2排出量が多く、環境負荷の小さい代替燃料への切り替えが課題となっている。
海外では、米国が30年までにジェット燃料の1割に相当する約1140万キロリットルのSAFを生産する目標を設定。欧州連合(EU)は燃料供給者に対し、ジェット燃料に混合するSAFの割合を30年に5%以上、50年に63%以上とすることを義務化する。政府はこうした事例も参考に目標を設定するとみられる。
日本では、日揮ホールディングスなどが25年までに廃食油(食用油)を原料とするSAFを本格的に供給する予定。バイオベンチャーのユーグレナもミドリムシに由来するSAFを25年に量産化し、生産量を拡大していく方針だ。
協議会ではこのほか、SAFの導入促進に向けた製造企業などへの支援策や、サプライチェーン(供給網)の構築などについても議論する。
持続可能な航空燃料(SAF)
廃食油や藻類、一般ごみなどを原料とするジェット燃料で、「Sustainable Aviation Fuel」の略。ジェット燃料に混ぜて使われる。原料の植物が成長段階の光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、実質的な排出削減につながる。全日本空輸と日本航空がまとめたリポートによると、既存燃料に比べ原料の生産から燃焼までのCO2排出量を8割削減できる。