フィリピン人記者らに平和賞、2年ぶりに対面で
ノーベル賞を授与、「報道の自由」を守る取り組みを評価
2021年のノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーのオスロ市庁舎で行われ、フィリピンの記者マリア・レッサ氏と、ロシア紙の編集長ドミトリー・ムラトフ氏に記念メダルと賞状が贈られた。昨年は新型コロナウイルス流行のため伝統的な式典が中止され、対面での開催は2年ぶり。
レッサ氏はジャーナリストとニュースサイト「ラップラー」の最高経営責任者(CEO)を兼ね、強権的なフィリピンのドゥテルテ政権と闘いながら取材活動を継続。ムラトフ氏は独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長で、ロシアのプーチン政権と対峙(たいじ)する姿勢で知られる。両氏とも、自由な独立ジャーナリズムが困難にさらされる中、「報道の自由」を守る取り組みが評価された。
レッサ氏は受賞演説で「ムラトフ氏と私はここで話す幸運を得たが、助けのないまま人知れず迫害されている記者たちはたくさんいる」と強調。独立メディアへの支援を訴えた。
ムラトフ氏は「ロシアでジャーナリズムは暗い谷を通っている。記者や人権活動家、NGOは外国のスパイ、『人民の敵』と見なされ、多くが職を失い、国外に出ている」と指摘。暗殺された元同僚記者アンナ・ポリトコフスカヤさんらの名を挙げ「この賞は全ての真のジャーナリズムのためにささげられる」と表明した。
式典には、昨年リモート形式で平和賞を授与された国連の世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長も出席した。(ロンドン時事)