タイ・ナコンナヨック県、特産品は日本の餅
大戦末期に軍医が伝承、「住民と日本兵の友好の証し」
タイ中部ナコンナヨック県で第2次大戦末期、駐屯していた日本軍の医師が住民に伝えた日本の餅が特産品として人気を集めている。商品化させたのは、軍医が伝授した女性の息子で元公務員のマノップ・シーアラムさん(62)。「特産品になったのは誇り。次世代に伝えていきたい」と意気込む。
ワチラロンコン現国王の妹のシリントン王女が2000年に現地を訪れ、大戦にまつわる逸話がないか県知事に尋ねたのがきっかけ。調査を指示されたマノップさんが困っていたところ、母親が軍医から餅の作り方を教わったと語り始めた。
住民らは当時、駐屯地前で揚げ菓子などタイのデザートを売っていた。しかし、日本兵の口に合わず、売れ行きは芳しくなかった。そこで、マノップさんの両親と懇意になった軍医が日本の餅を勧めた。紹介されたのはあんが入った餅。あんには小豆に代わり、緑豆を使った。店頭に出すと、連日完売となった。
話を聞いたマノップさんは餅の再現を思い付き、母親とレシピを作成。02年に餅をシリントン王女に献上し、絶賛された。餅は04年、政府が進める「一村一品運動」の商品に認定され、一家で手作りしている。
軍医は住民に家族と餅を食べた話を聞かせ、日本に残した妻子を恋しがっていたという。マノップさんの姉サンパオ・マリワンさん(69)は「軍医への敬意と謝意を込めながら餅を作っている」。マノップさんは「餅は住民と日本兵の友好の証し。特産品として定着し、(商品化後に)83歳で亡くなった母も喜んでいるはずだ」と語った。(バンコク時事)