フィリピンのドゥテルテ大統領「政界から引退」


違憲批判受け副大統領選への出馬を撤回、後継には言及せず

フィリピンのドゥテルテ大統領「政界から引退」

2日、マニラ首都圏パサイ市で、取材に応じるフィリピンのドゥテルテ大統領(AFP時事)

フィリピンのドゥテルテ大統領「政界から引退」

2日、マニラ首都圏で、フィリピン副大統領選に立候補したゴー上院議員(右)の手を持ち上げるドゥテルテ大統領(外国特派員協会提供・時事)

 フィリピンのドゥテルテ大統領(76)は2日、「政界からの引退を表明する」と述べ、来年5月の大統領選と同時に実施される副大統領選への出馬を撤回した。憲法違反に当たるとの批判を考慮したという。側近のゴー上院議員(47)と共にマニラ首都圏の立候補受付会場を訪れた際に明かした。

 与党PDPラバンは大統領候補にゴー氏、副大統領候補にドゥテルテ氏を指名していたが、ゴー氏が副大統領選への立候補を届け出、ドゥテルテ氏は手続きをしなかった。

 ゴー氏は「ドゥテルテ氏が出馬を撤回し、代わりに私が意志を継いで副大統領選に挑む」と説明。続いてドゥテルテ氏は、副大統領選への出馬が憲法違反と批判されたことに触れ、「国民の求めに従い、政界からの引退を表明する」と述べた。後継の大統領候補には言及しなかった。

 憲法は大統領(1期6年)の再選を禁止する一方、大統領経験者の副大統領就任を明確には禁じていない。しかし、大統領の辞任・死亡時は副大統領が昇格するため、専門家は「『再選』への裏口となる」と指摘。6月の世論調査で「ドゥテルテ氏の出馬は違憲」との回答が60%に達し、「出馬すべきだ」の39%を大幅に上回っていた。

 正副大統領選の立候補の受付期間は今月8日までだが、11月15日までは候補の「差し替え」が可能だ。ドゥテルテ氏は前回2016年の大統領選で「出ない」と公言し続け、受付期間内に届け出なかったものの、出馬を撤回した友人の代理として立候補して当選。今回もその再現を狙う可能性がある。

 一方、ドゥテルテ氏の長女サラ氏(43)は2日、再選を目指してダバオ市長選への立候補を届け出た。ただ、サラ氏は大統領選に関する世論調査で支持率トップを走り続けており、父と同じ手法で大統領選に出馬するとの見方がくすぶっている。

 大統領選にはプロボクシングで世界6階級制覇を果たしたマニー・パッキャオ氏(42)が立候補している。(マニラ時事)