ASEAN、アメリカの関与歓迎も行動に注視
高官が相次ぎ各国を訪問、アフガン撤収で揺らぐ信頼
シンガポールとベトナムを今週歴訪したハリス米副大統領をはじめ、バイデン政権高官が相次いで東南アジア諸国連合(ASEAN)各国を訪れ、インド太平洋地域との連携に強い意欲を示したことについて、加盟国の間では好意的な受け止め方が広がっている。ただ、アフガニスタン政権崩壊で米国への信頼は揺らいでおり、ASEAN側は米国がどのように関係を深化させるのかを慎重に見守っている。
トランプ前大統領はASEANが日米中などと開く東アジアサミットを4年連続で欠席した。タイで開かれた2019年は閣僚すら派遣せず、東南アジア軽視の姿勢を露呈。ASEAN側は米国との個別会議で出席者を格下げする対抗措置を取った。
ASEANは加盟各国に新型コロナウイルスワクチンを積極的に供給するなど、支援を絡めて地域への浸透を図る中国の対抗軸としての役割を米国に望んでいる。タイの著名コラムニストでもあるチュラロンコン大学安全保障・国際問題研究所のカウィ・チョンキッタウォーン上級研究員は、取材に「ASEANがトランプ前政権よりバイデン政権を歓迎しているのは明らか」と語った。
こうした期待に応えるかのように、ハリス副大統領はシンガポールでの演説で、中国の脅威に触れながら「インド太平洋地域の協力関係は米国の最優先事項」と連携を約束した。シンガポール国立大学のジャ・イアン・チョン准教授(国際関係)は「米国が着実に協力を深めるかが重要な指標となる」と指摘した。
一方で、域内には米国の今後の動きに対する懸念もある。カウィ氏は「米国はインド太平洋戦略の成否を握るASEANに関わる必要がある」と強調しつつも、アフガン政権が米軍撤収で崩壊する事態を目の当たりにし、「米国が本当に気に掛けてくれるのかという疑問も湧いている」と話している。(バンコク時事)